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2020.04.03

ソールテクノロジーの常識を変える、NIKE厚底ランニングシューズの歴史

今年2月、NIKE(ナイキ)から発表された長距離ランニング用シューズ、「NIKE AIRZOOM ALPHAFLY NEXT%(ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%)」。このソールテクノロジーを機能とともに、近年のランニングシーンをリードするNIKEの厚底ランニングシューズの歴史を紹介する。

エネルギーリターンを生む、前足部のナイキ ズーム エア ポッド

NIKE AIRZOOM ALPHAFLY NEXT% / Image Credit : NIKE
NIKE AIRZOOM ALPHAFLY NEXT% / Image Credit : NIKE
アルファフライ ネクスト%」の大きな特徴は3点。前足部にあるナイキ ズーム エア ポッドと呼ばれるクッショニングシステムと、フルレングスで搭載されたカーボンファイバープレート、そして39.5mm(メンズサイズ26.5cm)の分厚いミッドソールだ。
ナイキ ズーム エア ポッドとは、高圧のエアバッグ内にきつく伸ばされた伸張性の高い特殊な繊維を閉じ込めたもの。ランニング時に、アスリートの足が地面に着地すると、その繊維が圧縮されて衝撃を緩衝。そして、瞬間的に元の形状に復元することでエネルギーリターンを生むという仕組みだ。ナイキ ズーム エア自体は、新しいテクノロジーというわけではなく、1995年に発表されて以降、数々のランニングシューズに採用されてきた。新しいわけではないが、前モデルからのアップデートには、ナイキ ズーム エアの採用が最善だったようだ。
以前、ナイキ ランニング フットウェアのヴァイス・プレジデントであるブレット・ホルツ氏は、「ミッドソールに採用しているズーム X フォームとカーボンファイバープレートに加えてどんなツールを使うと、今まで以上にアスリートの求めるものを提供できるか。いくつかオプションを考えて試した結果、ナイキ ズーム エア ポッドが最適だったのです」と話してくれた。
シューズがどこまで貢献しているのかを測定するのは難しいが、少なくとも「アルファフライ ネクスト%」を着用したアスリートは既に結果を出している。大迫傑選手は東京マラソンで、2時間5分29秒の日本新記録をマーク。一山麻緒選手は2時間20分29秒の好タイムで名古屋ウィメンズマラソンを優勝。このタイムは日本女子歴代4位であるだけでなく、日本選手国内レース記録として過去最高タイム、また女子単独レースでの日本新記録だ。東京五輪に向けたマラソン全米選考会では、ゲーレン・ラップ選手が優勝していることからも、トップランナーの走りにマッチしたシューズであることは間違いなさそうだ。

2017年に初登場した、トップランナー向け厚底ランニングシューズ

軽量で分厚いミッドソールと、カーボン素材を使ったプレートの組み合わせ。今では多くのスポーツメーカーが採用しているが、トップランナー用のシューズは、地面からの反発をもらえるようにと、ミッドソールが薄いのが当たり前だった。その常識が覆ったのは2017年。比較的最近のことだ
42.195kmを2時間以内で完走する。2017年5月、アスリート、科学者、デザイナーらが一丸となって2時間の壁に挑んだNIKEのプロジェクト「Breakng2」が開催された。イタリアのモンツァ・サーキットを舞台に、エリウド・キプチョゲ選手、ゼルセナイ・タデッセ選手、レリサ・デシサ選手の3人が挑戦。惜しくも2時間切りはならなかったものの、エリウド・キプチョゲ選手が、非公認記録ながら2時間0分25秒という驚愕のタイムで42.195kmを走り抜いた。そのときに選手たちが着用していたシューズをベースにしたのが、2017年6月に発売された(日本発売は7月)「NIKE ZOOM VAPORFLY 4%(ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%)」というモデルだ。
NIKE ZOOM VAPORFLY 4% / Image Credit : NIKE
NIKE ZOOM VAPORFLY 4% / Image Credit : NIKE
「ヴェイパーフライ 4%」の特徴は、軽量でクッション性に優れたズームX フォームを大容量で使った分厚いミッドソールと、フルレングスで搭載されたカーボンファイバープレート。これが現在のアルファフライへと繋がっている。
2018年にはエリウド・キプチョゲ選手が2時間1分39秒の男子マラソンの世界記録をマーク。世界の主要大会で、NIKEの厚底シューズを着用したランナーが表彰台を席巻したことで、エリート市民ランナーの間でも厚底が常識になっていった。日本人選手では、2018年2月の東京マラソンで設楽悠太選手が16年ぶりに日本記録を更新。また、同年10月に行われたシカゴマラソンで、大迫傑選手がその記録をさらに塗り替えた。
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