冬はコートやジャケットに着込み、春や秋にはアウターとしても使えるインナーダウン。今や秋冬ワードローブの定番アイテムとなった万能アイテムは、ダウン専業ブランドからアウトドアブランド、セレクトショップのオリジナルまでさまざまなブランドからリリースされている。
2016年の発売以来、年々販売数を伸ばし続け、無印良品の冬の定番ウエアとして認知されている。
今回は無印良品を展開する
株式会社良品計画でメンズMDを担当する黒田裕生さんとともに、このインナーダウンの持つ魅力を明らかにしよう。
PROFILE|プロフィール
黒田 裕生(くろだ ゆうき)
株式会社良品計画 衣服・雑貨部
MUJI WALKERカテゴリーのMDを経験後、2024年から紳士アウターのMDを担当
アウトドアのミドルレイヤーをヒントに開発
まずは、「軽量ダウンノーカラージャケット」の開発背景について教えてください。
発売は2016年です。2008年に登場した軽量ダウンスタンドカラーベストがありまして、それをベースにデザインしたのがこのノーカラーダウンジャケットです。開発のヒントになったのは、当時のファッションシーンで流行していた、アウトドアブランドの“ミドルレイヤー”でした。ミドルレイヤーとは、ベースレイヤー(肌と触れる服)とアウターレイヤー(外気と触れる服)の中間に着る服のこと。外部の冷気と体との間に空気の層をつくり出し、ちょうど建物の断熱材のような役割を果たします。
アウトドアブランドのものは登山などでの着用を想定しているため、日常使いにするには高機能だったり、気軽に手に取りにくい価格だったり、普段の生活で着るのにちょうどいいものがなかった。そこで暖かくて軽く、そしてコストパフォーマンスに優れたミドルレイヤーを作ることにしたんです。
なぜ、衿のないノーカラーに?
無印良品のシンプルなデザインやレイヤードのしやすさ、着こなしの幅が広がる点などを考えた結果、ノーカラーがベストだと判断しました。また、折り畳んで持ち運ぶことも想定していたので、よりコンパクトにするためにもノーカラーにはメリットがありました。ハイクオリティな750フィルパワーダウンを使用
実際、着てみると、薄手で軽いのに暖かいと感じます。これはダウン(羽毛)に秘密がありますか?
はい。ダウンの品質はフィルパワーという単位で示すことができます。これはダウンのかさ高を数値化したもので、数値が高いほど、より大量の暖かい空気を含むことができるため、保温力が高まります。一般的には550~700フィルパワーが良質ダウンとされていますが、現行の「軽量ダウンノーカラージャケット」には、750フィルパワーのダ ウンを使用しています。
上質なダウンを使うと、価格が上がってしまうのでは?
当然コストは上がってしまいますが、場所によってダウン量をミリ単位で調整するなど無駄を省くことで、6000円を切る価格を実現しています。なお、使用するダウンはRDS(レスポンシブル・ダウン・スタンダード)認証[1]などの第三者機関により審査、証明を取得した羽毛のみを使用しています。
暖かいだけでなく、軽くてふんわりとした着心地も印象的です。