Fashion Tech Newsの記事を読まれている方なら、日清紡テキスタイル株式会社がどのような会社がご存知だろう。以前「めぐりコットン」を紹介したが、今回も綿を使った新たな生地が開発されたようだ。それがミズノ株式会社と共同で発表した「ワークジャケット・パンツ」に採用された「ASTERiSK by NATURESH(アスタリスク バイ ナチュレッシュ)
」だ。綿100%で、ストレッチ性を有しているのが特徴とのこと。 今回、この「ASTERiSK by NATURESH」を開発したのは、同社のテキスタイル事業部で、主にユニフォームを扱うセクションだ。今回、同社営業担当の方にミズノ株式会社とのコラボレーションの話から、今回の素材の特徴などをお聞きし、最近の同社の精力的な生地開発の源泉を伺った。
「ASTERiSK」に新たな変化を
今回のミズノ株式会社とコラボした経緯を教えてください。
今回、ミズノさんから綿100%をコンセプトにした生地の開発の依頼がありました。昨今では生地のストレッチ性が当たり前のように実装されていますので、差別化を図る必要がありました。ミズノさんとしても、すでに世の中に溢れている伸長率10%の生地を使って新商品だと宣伝するつもりはない。あくまでも画期的な生地として、綿100%のストレッチ商品を作りたいと熱く語っていただきました。
新たな生地という点に強いこだわりがあり、多くの取引相手がいる中で、私たちの技術力の高さに期待してくださったのだと思います。
今回開発された生地の元になる「ASTERiSK」の特徴について教えてください。
ホームページには、「ASTERiSK」の特徴をまとめた図を置いています。これらの生地に共通するのが「快適性」です。ここでいう快適性とは、いわゆるストレッチ性を指しています。快適性を実現する上でストレッチ性が必須なのですが、それだけでは不十分だと考えました。そこで「ASTERiSK」にプラスαの特徴を加えた生地の開発を行ってきました。先ほどの図を見ていただくとわかる ように、ストレッチの度合いを変えたり、通気性を高めたり、バリエーションを豊富に用意しました。
具体的に、どのような技術が用いられていますか。
基本的に「ASTERiSK」は伸長率10%以上の生地となっています。その特徴を出すために、横糸ではポリエステル由来の弾力性のある糸を用いています。他社ではポリウレタンを使用する場合もあるかと思いますが、私たちとしては耐久性の観点から使用していません。というのも、私たちのユニフォームを扱う部署では、激しい仕事をする方のために非常に高い耐久性を持った商品が求められています。その実現のために、ポリエステルを使用したさまざまな種類の糸を使って、織り方や加工を工夫してきました。その結果、伸びがよく耐久力も申し分のない生地を開発することができました。
そのようななかで、ミズノから綿100%の生地の開発依頼があったのですね。
ミズノさんからお声がけいただく前から、お客様のほうから綿100%の生地の要望がありました。たとえば、職場で火を使うのでポリエステル以外のものがほしいといった声です。私たちとしても潜在的な需要の高さはわかっていたつもりでしたので、本格的に開発に取り組みました。ところが、実際に開発を始めてみると、一筋縄ではいきませんでした。ポリエステルを綿に変えるだけだと思うかもしれませんが、そう単純ではありません。綿は化学繊維と違って、素材の機能が化けないのです。
ですが、ここは長年繊維事業に携わってきた私たちの自負もありますので、ポリエステルで養ってきた技術をうまく適用して開発を続けてきました。その結果、今回の「ASTERiSK by NATURESH」の発表に至りました。すでに確立していたストレッチ性の快適さを備えた「ASTERiSK」を、綿100%で実 現したのです。