従来の「背負う」バックパックとまったく違う、ベストのように「着る」タイプのバックパックを野山で目にする機会が増えた。一方、街で書類をあまり持たず、タブレットと貴重品をコンパクトに携行するのに適したアイテムを探すと、本来トレイルランニング用に作られた軽量で小型の「着る」バックパックが選択肢に入ってくる。
全体的に伸縮性のある素材を採用し、フィット感と動きやすさに優れている ADV SKIN CROSS SEASON 15 (ユニセックス) 18,700円(税込) 容量15LでサイズはXS、S、M、L、XLの5種類あり、「着用」する際のフィット感で選べる。色は写真のEBONY/ALLOYの他、ブルー系のNAUTICAL BLUE/MOOD INDIGOがある 菅谷さんによると、ベストのように着るタイプのバックパックが初めて世に知られたのはUTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)の100マイル(160km)トレイルランニング競争で、2009年にサロモンの選手だったキリアン・ジョルネが使用し、ゴールの際に手で掲げた瞬間だった。
「キリアン自身のリクエストで作ったプロトタイプの『ADV SKIN(アドヴァンスド・スキン)』を彼が高く掲げてゴールする様子が全世界に報じられたんですね。誰も見たことがない、まったく新しいバックパックとして注目が集まりました。当初は『ADV SKIN』という名称より、キリアンが使った『キリアン・ザック』という通称で話題になりました」
登山用のバックパックを小型にしたものではなく、トレイルランニング用にゼロから開発された新機軸は現在のモデルにも受け継がれている。ショルダーハーネスやヒップベルトという区別がなく、全体が身体にフィットする形状で装備を合理的に運べる。装着した感想としては、体幹を自由に動かせるので走りやすいだろう。
「反響を受けて2011年に『キリアン・ザック』と同じ5Lの『ADV SKIN 5』が発売されました。翌2012年には容量12Lの『ADV SKIN 12』が発売され、その年に初めて開催された富士山1周のUTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)では実際ほとんどの選手が『ADV SKIN 12』を使っていたんです。それから10年あまり、このタイプのバックパックも大きく進化しました」
15Lに容量アップ、防水性が高まった「ADV SKIN CROSS SEASON 15」もバックパック全体が身体にフィットする
容量アップで汎用性が高まり、防水性の向上でオールシーズン・全天候に対応 「2014年になって、選手のリクエストに応えてフロントの両サイドに500mLのソフトフラスクと行動食が入るポケットつきの『ADV SKIN』が出ました。それまでは背中に1.5Lのハイドレーションパックを入れて使う仕様で、フロントのポケットが小さかったんです。現在はソフトフラスクとハイドレーションパック、好きな方を選べます」500mLのソフトフラスク(別売)を両サイドに収納できる。ハイドレーションパック(別売)のチューブや飲み口を通すパーツも両サイドについており、給水しやすい側を選べる フラスクが入っているポケットの手前のファスナーを開ければ、そこもポケットになっている。従来この部分はメッシュだったが、「ADV SKIN CROSS SEASON 15」では防水仕様になっているので、たとえばスマートフォンを入れて行動するにも適している。タウンユースを考える場合もフロントのポケットの防水性は大きなメリットだろう。
「フロントのポケットが防水になっているバックパックはトレイルランニング用に限らず珍しいと言えますね。ポケット自体がないか、メッシュのタイプが多いです。そして全シーズン・全天候対応をうたう『ADV SKIN CROSS SEASON 15』は、もちろんメインの収納スペースも防水になっています。
メインの収納スペースはドライバッグ式で水濡れに強く、サブの収納スペースとして防水ポケットとメッシュのポケットがある
アウトドア対応の防水性能は、街でタブレットなどを持ち運ぶ上でも心強い メインの収納スペースよりも、さらに背中に近い位置には左右の幅が広くタブレットなどのデジタルツールを入れるのにちょうどいいポケットがある。止水ジッパーで開閉するこのポケットが入念な作りになっていると菅谷さんはいう。