
平尾が盆栽の世界に入ったのは、20年ほど前のことだ。大学までは陸上競技に打ち込み、将来は別の道を考えていた。転機になったのは、京都・東福寺で見た庭園だった。
「ここで初めて、“日本の文化にちゃんと触れた”気がしたんです」
ほどなくして、さいたま市・盆栽町で弟子入りすることになる。盆栽の経験は、ほぼゼロからのスタートだった。弟子入り初日、道具は一式支給された。その中に、2本のハサミがあった。
一本は、日常作業用。もう一本は、価値のある盆栽や根を切るときに使う“特別なハサミ”。
「このハサミだけは、絶対に雑に扱うな、と言われましたね」
