南部鉄器の製造技術を理解する上でまず押さえるべきは、鋳物という工芸が持つ厳格な原則です。
ある伝統工芸士の職人さんは、その本質を「鋳物っていうのは、間違っても偶然に良いものができるということはないんですよ」と語ります。鋳型(いがた)が完璧にできていなければ、完成品が良いものになることは決してない、と いうのです。
この言葉は、製造工程におけるごまかしのきかない厳しさを物語っています。鋳型にわずかでも欠陥があれば、それはそのまま製品の欠陥として現れます。
職人さんは「少しでも失敗したところを、あんたのせいだよって人のせいにはできないところがあるんですね」と続け、その結果は全て作り手の技術と責任に帰結すると話します。
この、人のせいにできない厳しさこそが、鋳物という仕事の難しさであり、同時に醍醐味でもあるのです。一つの製品を生み出すためには、全ての工程で完璧さが求められ、一つでも手を抜けば、それは製品として成立しないという、不変の原則が存在します。
