マリー・アントワネットやナポレオンが生きた時代の服はどのように着られ、つくられたのだろうか?
18世紀~19世紀の西洋アンティークの衣服を集める国内屈指のコレクター・
長谷川彰良さんは、服を分解して当時のものづくりを徹底解説する「衣服標本家」として活動している。数百年前の製法、素材、失われた技術を聞いた。
PROFILE|プロフィール

長谷川 彰良(はせがわ あきら)
衣服標本家。古い西洋の衣服を分解して「標本」にし、衣服の「構造美」や「着心地」を研究。型紙を起こして現代に数百年前の衣服の美しさを具現化することで、服飾の美を触って体験できるものにしている。コレクションを公開する「半・分解展」を主宰。著書に『あたらしい近代服飾史の教科書』(翔泳社)。
X:@rrr00129
1870年ごろのフランス陸軍の軍服(肋骨服)の「標本」©︎長谷川彰良コレクターの中でも、服を「分解」している方はとても珍しいですね。
父親が服を自作していた人で、幼いころから服を分解することに抵抗はなかったんです。その後、ファッション専門学校でオーダーメイドスーツのテーラーリングを学びました。服飾業界でも服の製造テクニックを勉強するために分解し、型紙を起こすことなどはしばしば行われています。現在のコレクター活動に入ったのは学生時代、古着屋で100年以上前の「消防服」を見つけたことです。手に入れて分解すると、その内部構造に涙が出るほど感動したんです。
外見はボロボロの作業着なのに、つくり方はオーダースーツそのものの緻密さでした。自分が生まれる前のファッションの「内側」に興味がわいたんです。
分解を通して、当時をよみがえらせているようですね。
そうです。世界から希少な服を集め、構造を研究し、分解や修復を含め た過程を発表すること。それらをまとめて「衣服標本家」と名乗っています。