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2022.01.26

Bananatex®:スイス発QWESTIONのバナナ繊維で作る布地

QWESTION(クエスチョン)は、2008年に設立された、スイスのチューリッヒとオーストリアに拠点を置くバッグブランドだ。現在バッグ業界を支配している合成素材に代わる素材のために、フィリピン産のバナナの木アバカの繊維を用いたBananatex®(バナナテックス®)を開発・提供を行う。現在バナナテックス®は、クエスチョンから事業を切り分けスピンオフ企業として、H&Mをはじめとした企業への資材提供も行っている。今回、同社の共同創業者かつ現CEOであるHannes Schoenegger(ハネス・シェネガー)氏に、素材開発の経緯と、バナナテックス®の生産方法についてインタビューを行った。

求め続けた天然繊維 

「東京でもロサンゼルスでもパリでも、街で見かけるバッグの約8割は、プラスチック由来です。そして、プラスチックは全体の7-8%程度のみがリサイクルされています。つまり、大半のプラスチックは、廃棄された後、埋立地や海など、私たちが望まない場所に渡ってしまっています。そこで我々はこの実情を悪化させない、良い方法を模索しました。我々にとってより良い方法とは、天然繊維をベースにしたテキスタイルを使用することでした」とシェネガー氏が話すように、クエスチョンは創業以来、機能的かつタイムレスな植物由来の素材でバッグを生産・販売している。
ブランド開始時から天然繊維を用いたバッグ製品を発売してきた同社だが、当時市場で購入できる素材に満足できず、市場に存在しない素材を求め、様々な素材を探求してきたという。ブランドを発足した2008年、同社の理念に沿った天然繊維のテキスタイルは、コットンキャンバスしか存在しなかったため、オーガニックコットンの使用を考案したという。ところが、ブランドのデザインに合う認証付きのヘビーキャンバス生地が市場で見つからなかったため、独自のサプライチェーンを構築し、2013年よりオーガニックコットンを用いた製品の提供を開始したという。
しかし、オーガニックコットンもまた、栽培時に大量の水が必要であること、さらにコットン自体は繊維が短くバッグ用に向かないといった問題から代替素材を探すべく模索を続けたという。そして続く2014年には、ベルギー産のオーガニックヘンプをイタリアで紡績し、スイスで織るという、ヨーロッパ内でのサプライチェーンを構築したそうだ。サプライチェーン自体は作り上げることはできたものの、当時を振り返ってシェネガー氏は「当時、多くの技術やノウハウを持った少数の企業が次々と廃業しており、我々が求めていた技術は、ヨーロッパ内には存在していませんでした」と、天然繊維製の布地の生産を欧州内で実行する限界を感じていたという。そこで、元より同社のバッグの製造拠点となっていたアジアを中心に、代替繊維を探すことにしたようだ。
そうして見つけたバナナの繊維は、強靭かつ弾力性にも優れていたことから、バッグへの使用に望ましく、さらにアジアを中心とした短いサプライチェーンの構造を実現できたことから、バナナ繊維をベースに開発パートナーと共にバナナテックス®の生産を開始した。「私たちが使用しているアバカというバナナは、主にフィリピンとインドネシアで何世紀にも渡って栽培されており、ロープやマットレスに使用されてきたという背景があります。しかし、バナナの繊維は、非常に太く長いため、バッグに適した布を作るためには、新たに細い糸を作る必要がありました。そこで我々は3年の歳月をかけ、この丈夫な繊維から細い糸を作る方法を模索したのです」

アジアでのサプライチェーンの構築

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#Sustainability
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