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2024.04.15

業界が注目するドイツ発レザーグッズブランド「Lutz Morris」 ミニマルなデザインの背景にある「職人技術の継承と人々の支援」への想い

自動車や一般機械など、世界有数の先進工業国であるドイツ。「質実剛健」と評価が高いドイツが誇るプロダクトデザインのノウハウをファッションに投影させる、レザーグッズブランド「Lutz Morris(ルッツモリス)」が今、業界で注目を浴びている。
創設者兼デザイナー、ティナ・ルッツ(Tina Lutz)はドイツで生まれ育ち、パリでファッションを学び、「Issey Miyake」のもと東京でキャリアを積んだ。その後、ニューヨークで「CALVIN KLEIN」や「BARNEYS NEW YORK」でデザインに携わり、24年間をアメリカで過ごした後に現在はミラノに在住している。
彼女は自身のルーツへの回帰を求めてドイツに帰郷。環境に責任を持った倫理的な方法で、独自のノウハウを継承する小さな家族経営の工房で手作りされた、純粋でミニマルなデザインのバッグブランド「Lutz Morris」を2017年に立ち上げた。
主にドイツ産の素材を選択することを誇りに、使用するレザーの90%はドイツ国内のなめし工場から調達。機能性と人間工学を考慮したデザインアプローチは、「ファッションデザイナーではなくプロダクトデザイン」だと彼女は語る。
ポケットの位置や開口部の開き方、ショルダーを調節するアジャスターといった細部に至るまで緻密に計算されたバッグは、デビュー早々に業界内で話題となり、「MATCHESFASHION」と1年間の独占契約により世に送り出された。
ファッション業界でのさまざまな経験を経て彼女が辿り着いたのは、「技術を継承し、人々を支援する」ことを目的とした自身のブランド。「Lutz Morris」の冒険が始まるきっかけから、ミニマルなデザインに徹する真意まで、ティナにその想いを聞いた。
PROFILE|プロフィール
ティナ・ルッツ
ティナ・ルッツ

ドイツ出身。パリでファッションデザインとパターンを学び、東京に移住して「Issey Miyake」のデザインチームに参加。その後に渡米し、24年間ニューヨークとサンフランシスコで働き、2017年にバッグを中心としたレザーグッズブランド「Lutz Morris」を創設。現在はミラノを拠点に、インテリアデザイナーとのコラボレーションによるオブジェクトも制作している。
クレジット:danielamuellerbrunke

ものづくりのデザインには、素材と設計の知識が必要不可欠

はじめに、ブランド創設に至った動機について教えてください。
東京とニューヨークでさまざまなブランドに携わった後に独立して、テーラリングとニットを中心としたウィメンズウエアブランド「LUTZ&PATMOS(ルッツ&パトモス)」を11年間指揮していました​​。
「Lutz Morris」創設のきっかけは、偶然の出会いからでした。コロナ前にベルリンに住んでいた際、ドイツ人アーティストたちと知り合いました。彼らは国からの援助がなく、生活が苦しい状況にありました。
ファッションカウンセラーから、ニューヨークでアーティストたちが働ける場所はないかと相談を受けました。私は当時クリエイティブ・ディレクターとして勤務しており、アクセサリーデザインには直接関わっていませんでした。
しかし、彼らのアトリエを訪れ、レザー織りの作品に感銘を受けました。それをバッグと合わせるアイディアが浮かび、サンプル作りからレザーグッズブランド立ち上げに踏み切りました。
はじめは代用レザーを使うかどうかなど、リサーチが大変でした。過去の経験を生かし、ハードウェアの仕様など自問自答を重ねながら、試行錯誤の末ブランドの立ち上げに至りました。
「Issey Miyake」をはじめとしたファッションブランドで培った経験を、「Lutz Morris」でどのように生かしているのでしょうか?
洋服とバッグのデザインは、どちらにも素材と設計の知識が必要不可欠です。コートに限らず、バッグを作成するときも同じ知識が必要なのです。
使用する素材は同じなので、ある意味、料理のようですね。目の前にある素材をどのように調理するか。それがデザイナーの仕事だと思います。
Dan Zoubek
Dan Zoubek
「Lutz Morris」のフィロソフィーとは?
ファッションの消費のサイクルが速く、たったワンクリックで商品が手に入る時代に、私はそのシーズンのためのものではなく長く愛せるようなものを作りたいと思っていました。それは何世紀も続く家族経営のビジネスや、彼らが一つひとつの作品に投資する技術に立ち返るものです。
「Lutz Morris」のコレクションは、多くのものを求めるのではなく、正しいものを求める人々のためにあります。彼らは、自分の人生の一部となるものとの繋がりを求めています。
多くを求めず、より良いものを買っている人たちに向けて、作品は意識的に作られたもので、目的を持っています。私のデザインはこのフィロソフィーが映し出され、キャッチーさよりも、タイムレスであることを指針にしています。
ロゴの力というのはあまり信じていないので、すべて、バッグの後ろにつけています。もし前についていても、とても小さいロゴです。デザインを生かすために、ロゴは避けたいというのが私のポリシーです。
Daniela Müller Brunke
Daniela Müller Brunke
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