パンデミックの静けさの中で、ひとりの若いデザイナーが「小さな美しさ」と「暮らしに寄り添う機能」を融合させたアクセサリーブランドを生み出した。
パリ発「
Ponctuations(ポンクチュアシオン)」は、“装いに句読点を添える”という発想から、日常の中に感性が宿るオブジェを提案する。創設者マチュー・デスメ(Mathieu Desmet)に、ブランドの思想とクラフトへのまなざし、そして今後のビジョンを聞いた。
ロックダウンから生まれた静かな創造
ブランドのスタートは、新型コロナウイルスによるロックダウンの最中だった。多くの人々が不安と閉塞感の中にいた時期に、設立者兼デザイナーのマチュー・デスメは自らの内面と深く向き合い、「自分にとって意味のあるものを世の中に提示したい」という思いを強くしたという。「人との接触が断たれたことで、むしろ自由になれた気がした。外に向かうのではなく、自分の中にある原点に立ち戻る時間だった」
そんな静かな時間の中で生まれた「Ponctuations」のプロダクトには、機能性と詩情、そしてデザイナー自身の誠実さが込められている。
ブランドを始めることは明確な目標というよりも、思考と感覚の積み重ねの延長線上にあった。デスメは「きっかけは自然に訪れた」と振り返る。長年、インハウスデザイナーとして「LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)」や「MARC JACOBS(マーク・ジェイコブス)」、「DIOR(ディオール)」のもとでキャリアを積んできた彼は、組織の中でデザインを手がける喜びと同時に、制限や妥協の現実にも向き合ってきた。