パリ1区、パレ・ロワイヤルからほど近いクロワ・デ・プティ・シャン通り34番地。曲線が美しいブルーグレーの窓枠が印象的なブティックが、岡本圭司さんの営む「
ヴォルテラーノ」だ。
多くの観光客でにぎ わうルーヴル美術館の北側エリアとは対照的に、この通りは静かな空気に包まれている。隣接するフランス銀行をはじめ、文化省などの行政機関が集まる官公庁街ならではの落ち着きが漂う。
そんな地区に、ぽっとあかりを灯すように「ヴォルテラーノ」は立つ。ドライフラワーが彩る店内は、パリにありながら南欧の情緒が感じられる。人懐っこい笑顔が印象的な岡本さんにお話をうかがった。
憧れたイタリアと20代でのミラノ滞在
日本からパリへと渡るクリエイターの道のりは、大きく2つに分かれる。若さを武器に未熟なまま飛び込み、現地でもがきながら道を拓こうとする者。そして、日本で経験を積み、盤石な技術と共に満を持して世界に挑む者。48歳でフランスに来た岡本さんは、後者の道を歩んできたデザイナーだ。
京都で仕立屋を営む家に生まれた岡本さんは、東京で紳士服の専門学校を出た。その後の 2年弱をイタリアのミラノに滞在。日本へ戻ってからはファッション関連の会社に就職して、3年ほど修業してから京都の実家を手伝った。