2023年、パリを拠点に日本人デザイナー中尾隆志によって設立された「
TKA(テーカーアー)」は、ラグジュアリーメゾンで磨いたクチュールの手仕事と精緻なカッティングを、現代の日常着へと昇華させるブランドだ。
本記事では、その背景にあるデザイン哲学、日本とフランスの2つの文化を融合させる独自の美意識、そしてブランドの未来像を、中尾さん自身の言葉で紐解いていく。
PROFILE|プロフィール

中尾 隆志(なかお たかし)
NY、PARIS在住のファッションデザイナー。日本の大学でフランス文学を専攻後、パリに渡り、ラグジュアリーメゾンでの経験を経て2023年に自身のブランド「TKA PARIS」を設立。クチュールの手仕事やカッティング技術を現代的なウエアに落とし込み、日本とフランスの美学を融合した新たなモードを発信している。
パリでの偶然が拓いた道、クチュールの真髄に触れた経験
デザイナーへの道のりを教えていただけますか?
もともと日本の大学でフランス文学を専攻していました。昔からファッションは好きでしたが、自分で作ることになるとは考えてもいませんでしたね。きっかけは、服飾専門学校に通っていた姉の存在です。家でポートフォリオを作ったり、服を仕立てたりする姿を見て、ファッションデザインに興味を持つようになりました。その後、語学習得のためにパリへ渡ったのですが、ある日コインランドリーで偶然にも姉が通う専門学校の先生に、「ファッションに興味はありますか?」と声をかけられたんです。その出会いが、本格的にこの道へ進む第一歩でした。
その先生の紹介でインターンシップの機会を得て、最終的には憧れのデザイナーだったHaider Ackermann(ハイダー・アッカーマン)のメゾンで働くことになります。そこから僕のデザイナーとしてのキャリアが始まりました。