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2021.05.26

既存のバリューチェーンを活用、スウェーデンのリサイクル企業Renewcellが促す進化とは?

Renewcell(リニューセル)はスウェーデンのリサイクル企業だ。当社が特許を保有する技術は、廃棄されたセルロース繊維をリサイクルし、従来のリヨセル・ビスコース繊維生産工程にそのまま原料として使用できるCirculose®(サーキュロース®)の生産を可能としている。2020年には、H&M、Levi’sの製品に商品化されており、現在繊維リサイクル業界で注目を集めている。今回、CMO兼IRの責任者、Harald Cavalli-Björkman(ハラルド・カバリ=ビョークマン)氏とブランド・マネージャーのNora Eslander(ノラ・エスランダー)氏にインタビューを行った。

製紙・パルプ産業から得た知見をリサイクル技術に応用

Renewcellは、どのようにして創業を開始したのでしょうか。
Renewcellは、2012年に研究者や起業家たちによって構成されるグループによって設立されました。そして、私たちは、世界で最も環境に影響を与えている産業の1つを、素材の循環的な流れを作ることで変えるというミッションのもと、事業に取り組んでいます。そして、会社を発展させながら、業界内で「産業の進化」を促し、業界外でもサービスや、業界の持続可能な発展のためのインスピレーションを与えていきたいと考えています。

創業者が目を向けたのは、人々がより豊かになり、ファッション市場が共に発展し、繊維の需要が増加したと同時に、その製造方法や栽培方法による環境への影響が顕著に増加している現状でした。一方で、衣類にリサイクルされる割合は1%にも満たず、つまり、バリューチェーンの中では繊維を一度しか使用されず、廃棄され、埋め立て・焼却されていました。

具体的に言えば、出回っている綿の繊維はピュアなセルロースなので、つまり、私たちは綿製の服を捨てるときに、同時にピュアな状態のセルロースを捨てていることになります。従来セルロースは、木材から作られ、ビスコース繊維やリヨセル繊維などの高品質なファッション繊維の原料として使われてきました。そこでセルロース専門の化学者、セルロース分野で成功を収めてきた研究者、起業家らで構成された創業チームは、綿製品に含まれているセルロースを再利用して、高品質なビスコース繊維・リヨセル繊維を作ることができるのではないかと考えたのです。
つまり、既にある産業の知恵から、問題の解決策が生まれたということですね。
スウェーデンは、もちろん製紙・パルプ産業が盛んな国であり、同産業は国内で長い歴史を持つ産業であるという特徴があります。そのため、国内には多くの専門知識が蓄積しており、私たちの研究者もその一端を担っていました。そこで彼らは、2012年から繊維廃棄物を処理し、ビスコース・リヨセルの原料とするために、大量生産が可能な工業プロセスの構築に着手しました。つまり、人工セルロース系繊維の開発に着手したということです。
そして、2012年からの進歩はかなり早く、2014年にはラボスケールで最初のプロトタイプとして、完全に繊維廃棄物から作られたドレスを作りました。さらに、2016年に創業者たちは、ラボのプロセスをスケールアップするために、デモスケールの生産施設に投資することを決めました。
そうして建設された工場は、2018年から試運転が開始されました。工場はストックホルムから電車で2時間ほど西に行った、Kristinehamn(クリスチネハムン)というスウェーデン中部の紙・パルプ産業の中心地に建設されました。そこで生産を開始し、2019年より「Circulose®(サーキュロース® )」の販売を開始しました。
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#Sustainability
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