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2020.07.02

ファッションはどう変わる?軍地彩弓に聞く、バーチャル時代のデザインと表現、メディアと消費(中編)

新型コロナウイルスの感染拡大、それによる外出自粛の生活、そういった状況下で急速な盛り上がりをみせたバーチャルファッション。これまでFashionTechNewsでは、様々な事例を取り上げ、その背景にある想いに迫ってきた。一方で、こういった新たなテクノロジーが実現するサービスや体験は、「ファッション」にどんな影響を与えるのだろうか?
バーチャル時代の「ファッション」を多角的な観点から捉えるべく、ファッションクリエイティブディレクター・編集者の軍地彩弓さんをお迎えし、プロデュースされたキャラクター着せ替えアプリ「ポケコロ」KEITA MARUYAMAのコラボレーションについて、そして昨今のバーチャルファッションの盛り上がりについて、表現、教育、メディア、消費といった様々な視点からお話を伺いました。
PROFILE|プロフィール
軍地彩弓/ファッションクリエイティブディレクター・編集者

大学在学中から講談社の『Checkmate』でライターのキャリアをスタート。卒業と同時に『ViVi』でフリーライターとして活動。その後、雑誌『GLAMOROUS』の立ち上げに尽力。2008年に現コンデナスト・ジャパンに入社。クリエイティブディレクターとして『VOGUE GIRL』の創刊と運営に携わる。2014年に自身の会社、株式会社gumi-gumiを設立。『Numéro TOKYO』のエディトリアルアドバイザー、ドラマ「ファーストクラス」のファッション監修、Netflixドラマ「Followers」のファッションスーパーバイザー、企業のコンサルティング、情報番組のコメンテーター等幅広く活躍。

バーチャルで強いファッションデザイナーとは?

今回、KEITA MARUYAMAとのコラボレーションを進めた理由でもあると思うのですが、バーチャルにおいて、どういったデザイナーが強みや適性があるとお考えでしょうか?ファッションデザイナー自体に求められる役割も少しずつ変化するのでしょうか?
軍地やはり、デザイナーが持つのは世界観。バーチャルだとキャラクターは、リアルな自分の身体そのものではないですよね、例えば自分の着たい服が、身長が足りないからこのドレスは着れないとか、太っちゃったからこのスカート履けないということが起きえない。夢を現実にしやすい世界だからこそ、リアルクローズよりも、ファンタジーを実現できるようなものが生き残れると思うんです。キャラクターデザインだったり、ファッションデザインとしての個性が強いものでないと勝てないですよね。
バーチャルでは、リアルクローズがデザイナーの名前を伴って入ってきたところで、なかなかわかりにくい。シンプルで有名なデザイナーでは、既存のノンブランドのデジタル上のファッションと差別化が難しいですね。となると、デジタル内でファッションデザイナーに求められる素質は、強い世界観を持ってらっしゃることが大きいと思います。やはり、クリエイティビティってそこにあるので。
今回、どのデザイナーさんに声をかけようと思ったときに、敬太さんを一番先に思いつきました。やはりどうしても、リアルクローズで作らざるをえなくなってきたのが、特に日本のファッションデザイナーの世界。リアルクローズだからこそ、たくさん売りやすいのだけども、だんだんと没個性化することもあると思います。そうみると、柄が特徴的だとか、アイデンティティが確立されていることが、バーチャル空間でもすごく強みとなりますね。あつ森でバレンティノなどがピックアップされたのもロゴが強いので、そういった強い世界観を持ったブランドしか生き残れないというのが、バーチャルの世界だなと思いました。
すごく面白いですね。
軍地リアルクローズというのは、服を着る人がフィジカルに似合うかどうか。例えば、会社に行かなきゃならないから服のフリルは無理と思っていたのが、バーチャルでは気にせずに使える。なんだったら、金魚が頭に乗って水が滴り落ちているとか、花弁のパラソルから花びらが舞うとか、それがファンタジーだけどリアルではあり得ないですよね。
それを考えるのは0から有を産む力で、一番尊敬されるものだと思うのだけれど、それを発揮できている人は実はそんなに多くはないんですよね。そうすると、もちろんデジタルで売ることだけが全てではないけれど、デジタル空間で必要な資質とフィジカルなモノを売る資質には少しズレがあるというのは、今回の経験から得た気づきです。
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