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2024.09.06

微生物が生み出す“未知の糸” 宇多田ヒカルのLIVEツアー衣装デザインの舞台裏【A-POC ABLE ISSEY MIYAKE × Spiber】

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9月1日にファイナルを迎えた「HIKARU UTADA SCIENCE FICTION TOUR 2024」。台北・香港を含む全公演のステージに現れた、美しいLIVEツアー衣装をご存じだろうか。
無数の曲線がグラデーションをともなって絡みあうドレスは、宇多田ヒカルの豊かな歌声がそのままかたちになって体を包んでいるかのようだった。
その衣装はきわめてユニークなコラボレーションによって制作された。デザインは「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE(エイポック エイブル イッセイ ミヤケ)」。生地にはバイオテクノロジー企業・Spiber(スパイバー)が開発した「Brewed Protein™(ブリュードプロテイン)ファイバー」が使用されている。微生物発酵技術で生み出されたサステナブル素材である。
ファッションの未来を指し示す、1着のドレス。イッセイ ミヤケのアトリエで宮前義之氏が率いるチームとSpiber社の浅井茜さんに制作の舞台裏を聞いた。
PROFILE|プロフィール
(左から)A-POC ABLE ISSEY MIYAKE・デザインエンジニアの中谷 学(なかたに まなぶ)/髙橋 奈々恵(たかはし ななえ)/デザイナーの宮前 義之(みやまえ よしゆき)
(左から)A-POC ABLE ISSEY MIYAKE・デザインエンジニアの中谷 学(なかたに まなぶ)/髙橋 奈々恵(たかはし ななえ)/デザイナーの宮前 義之(みやまえ よしゆき)

A-POC ABLE ISSEY MIYAKEチーム

PROFILE|プロフィール
浅井 茜(あさい あかね)
浅井 茜(あさい あかね)

Spiber株式会社 Marketing & Communication部門 Communicationセクション マネージャー 

“1枚の布”が秘める広大な可能性

「このドレスは、一枚の布というコンセプトからできています」
実物を目の前に、A-POC ABLE ISSEY MIYAKE(以下、A-POC ABLE)デザイナー・宮前義之さんは話す。
「HIKARU UTADA SCIENCE FICTION TOUR 2024」ス��テージ衣装の制作風景 ©︎ ISSEY MIYAKE INC.
「HIKARU UTADA SCIENCE FICTION TOUR 2024」ステージ衣装の制作風景 ©︎ ISSEY MIYAKE INC.
「宇多田さんの最新アルバム『SCIENCE FICTION』からイメージを膨らませてデザインの方向性を決めました。緩やかな曲線状のプリーツが織り込まれた一枚の布をリング状につないで、体のラインにフィットさせながら、有機的でダイナミックなフォルムのドレスを造形していきました」
一見すると、これがひとつながりの生地だとは思えない。客席のどこからでも存在がわかるようボリュームを出すための曲線と、体にフィットさせるための曲線を使い分けながら生地をドレスへと仕立てていく技術は、西洋的な立体裁断とは異なる発想で服作りを開拓してきたイッセイ ミヤケの真骨頂だ。
同時に“A Piece of Cloth(一枚の布)”を意味する「A-POC」のアイデンティティそのものでもある。
優しくも力強いグラデーションは、生成り色の生地を生かしながら手染めで仕上げた ©︎ ISSEY MIYAKE INC.
優しくも力強いグラデーションは、生成り色の生地を生かしながら手染めで仕上げた ©︎ ISSEY MIYAKE INC.
「宇多田さんの衣装を長年担当しているスタイリストの小川恭平さんやツアーの演出担当の方たちと打ち合わせを重ねて、ステージ衣装としてのデザイン性と機能性を両立させることができました。マイクの持ち方やステージ上での立ち振る舞いなどをヒアリングしてシルエットのバランスを最後まで調整しました。実際に衣装を身に着けた宇多田さんは『見た目よりも軽い』と言ってくれて、うれしかったですね」とパターンを担当した髙橋奈々恵さん。
美しさと機能性を併せ持つだけではない。このドレスにはファッションにおけるイノベーションの結晶と言えるほどの先端技術が詰まっている。A-POC ABLEをこのプロジェクトに招き入れたのは山形に本社を置くバイオテクノロジー企業・Spiberだった。

「微生物の力」がつないだ異例のプロジェクト

台湾公演でのステージの様子(photo:cherry chill will.) 宇多田ヒカルのコメント:8月4日東京公演のMCより 「すごいよね、すごい素敵な召し物をこしらえてもらいました。新しい素材なんだって。軽くて環境にいいの。Brewed Protein™だったかな。Spiberていう会社さんが作ってくれて」
台湾公演でのステージの様子(photo:cherry chill will.) 宇多田ヒカルのコメント:8月4日東京公演のMCより 「すごいよね、すごい素敵な召し物をこしらえてもらいました。新しい素材なんだって。軽くて環境にいいの。Brewed Protein™だったかな。Spiberていう会社さんが作ってくれて」
「最初は宇多田さんサイドへSpiberからBrewed Protein™ファイバーを使用した衣装をご提供できないかとお話させていただき、企画が進むにつれてこちらからデザイン、制作を担当いただける方を検討、提案することとなり、ご縁あってご参画いただけることになったのが、兼ねてから素材を使用した開発を重ねてくださっていたA-POC ABLEさんだったのです」と語るのはSpiber社でコミュニケーションマネージャーを務める浅井茜さんだ。
Spiber社は独自の微生物発酵プロセスによって、この衣装の素材となる繊維「Brewed Protein™ファイバー」を作り出している。
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