第3回となる今回、スポットを当てたのは、防水シューズ。株式会社ワークマン製品開発第5部チーフバイヤーの吉田悟さんに、ワークマン公式アンバサダーであり、多数の共同開発製品を世に送り出してきた山田耕史がお話を伺った。
山田耕史(以下、山田)現在多数の製品が展開されているワークマンのPBのシューズは、いつ頃から作られるようになったのですか?
吉田悟(以下、吉田)PBとして本格的に展開が始まったのは、2017年に発売された「アスレシューズ」からです。
山田「アスレシューズ」は980円という驚きの低価格ということもあり、発売当時大きな話題となりました。ワークマンがPBで低価格のシューズを販売できる要因は何でしょうか?
吉田やはり一番大きい要因は、大量発注です。たとえば、今の売れ筋製品である「防水シューズハイバウンスレイン」はまだ発売から約半年しか経っていませんが、すでに8万足を売り上げており、年間では15万足くらいになると思われます。
吉田大量発注するということは、生地が一度に大量に仕入れられるので、製造コストが安くなりますし、工場の方も管理が楽になるので、その分人件費などのコストも下がります。
ワークマンであれば、年間で40万足というかなりの量を発注することもあるので、工場にとって安心感が生まれるというメリットもあります。
山田とはいえ、ワークマンが最初にPBとして「アスレシューズ」をつくったときは、まだそんなに売れるかどうかはわかりませんでしたよね。最初に980円という売価での製造を受けてくれた工場は凄いですね(笑)。
吉田そうですね(笑)。最初に製造していただいた工場には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
ワークマンのシューズは防水性をはじめとした機能性が肝になりますが、これまで我々が取引してきた工場はワーキングシューズを数多く製造しており、機能性についてのノウハウを持っています。そういったところにお願いをすると、価格を抑えながら機能性を高くすることが可能になります。
さらに、ワークマンの他の製品と同じように、工場の閑散期に製造することも、売価を下げる大きな要因です。
山田シューズの工場には、繁忙期と閑散期ってあるものなのでしょうか? 服の場合はアイテムによって着る季節がある程度限定されるので、それに合わせて製造する時期も決まってくるだろうな、というイメージは湧くのですが。
吉田ヨーロッパのシューズブランドは、一気に大量の発注を行います。ですので、その製造が終わってしまえば、次の発注が来るまで工場は閑散期に入ります。ワークマンではその時期を狙って発注をしています。
ワーキングシューズの最新トレンドはヨーロッパから生まれる
山田ヨーロッパのシューズブランドはそんなに大量の発注をするんですね。シューズの分野はヨーロッパが中心なんですか?
吉田そうですね。特に我々が主に扱うワーキングシューズは、ドイツが本場です。
山田ドイツと言えば、アディダスやプーマといった世界的なスポーツブランドが思い浮かびます。
吉田ドイツでは、ヨーロッパを中心とした世界中のワーキングシューズメーカーが最新作を出品する「A+A」という労働安 全衛生展や、「ISPO」という国際スポーツ用品展示会が開かれていて、そこがワーキングシューズのトレンドの発信地になっています。
山田製品の企画のアイディアはどういったところから生まれるのですか?
吉田今お話しした展示会なども当然チェックはしていますし、マーケットリサーチなども行っていますが、ワークマンの店舗でお聞きするお客様のお話から得られるヒントはとても多いです。そういった点で、全国に多くの店舗があるというメリットは非常に大きいですね。また、ワークマンではPBのシューズを着用している社員がとても多いので、彼らから直接要望が寄せられることもよくあります。
山田販売した製品は、お客さんや社員さんの声でさらにアップデートが施されるんですね。