長年のワークウエアづくりで培われた高機能と、驚きの低価格で話題のワークマン。なかでも真冬の屋外での作業にも耐えうる防寒アウターは、ワークマンの真骨頂とも言えるアイテムである。 ワークマンの「イージスフュージョンダウンジャケット」は、5,800円とワークマンではトップクラスに高い価格でありながら、2020年秋冬の登場以来、ワークマンを代表する防寒アウターとして支持を集め続けている。今回は「イージスフュージョンダウンジャケット」の企画に携わる株式会社ワークマン製品開発第6部チーフバイヤー羽倉優太朗さんに、ワークマンの公式アンバサダーで、「イージスフュージョンダウンジャケット」の共同開発者でもある山田耕史が、開発にまつわるエピソードを聞いた。 山田耕史(以下、山田)現在ワークマンでは、フィールドコア、ファインドアウト、そしてイージスの3つが、主力のオリジナルブランドとして展開されています。前回の記事で取り上げた「リペアテック洗えるフュージョンダウンフーディー」はフィールドコア、そして今回の「イージスフュージョンダウンジャケット」は、イージスの製品です。
そもそも、イージスというブランドはどういった経緯で始まったのですか?
羽倉優太朗(以下、羽倉)実は、「イージス」はもともとは製品名だったんです。
「イージス防水防寒スーツ」という上下セットで4,900円の製品がそれです。防寒性の高いレインウエアが欲しい、というニーズにお応えしたもので、主に雪国での農作業のときに着用されていました。
羽倉「イージス防水防寒スーツ」のカラーバリエーションの中に、ライムがありました。本来、そういった色の製品は差し色として展開しているのでそんなに 売れないのですが、あるときからライムの売れ行きが非常に良くなりました。その要因を調べてみると、バイカーの人たちが買っていっている、ということがわかりました。防寒性と防水性を兼ね備えており、しかもライムカラーで視認性も高いので、バイクに乗るときに最適であるということが、ブログやYouTubeなど、インターネットの口コミで広がっていたのです。
当時、ワーカー以外の客層にワークマンの製品が着用されることはほとんどなかったので、そういったニーズがあることが、我々には非常に新鮮でした。
そこで、新たな客層にさらに認知してもらうにはどうすればいいか、といろいろ考えたところで出した答えが、プライベートブランドの展開でした。
当時、ワークマンにはプライベートブランドがなかったので、イージスはワークマン初のプライベートブランドということになります。
山田ということは、「イージス防水防寒スーツ」はその後のワークマン快進撃の原点なんですね。
山田現在販売されている「イージスフュージョンダウンジャケット」の前身となる、「イージス防水防寒ダウンジャケット」が2020年秋冬に発売されました。「リペアテック洗えるフュージョンダウンフーディー」と同時に発売され、「ワークマン初のダウン」ということで大きな話題となりました。
山田前回のインタビューで、ワークマンには4,000円を下回るとお客さんが手に取りやすくなる「4,000円の壁」があるとお聞きしました。「イージス防水防寒ダウンジャケット」は「4,000円の壁」を大きく上回る5,800円 です。売れ行きはいかがでしたか?
羽倉現場で職人さんが着用する場合は、どうしても汚れたり、ダメージを受けたりすることが多く、1シーズン着たら終わり、ということになりがちです。そうなると、できるだけ安価であることが求められますが、「イージス防水防寒ダウンジャケット」は5,800円という価格を上回る価値を提供できましたし、2020年はワークマンプラスを展開しはじめたことで、カジュアル用途で着用される一般ユーザーのご来店も増えたので、売れ行きは非常に好調でした。