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実現したい品質や機能から始まる服、新ブランド「AUREME」が挑むものづくり

2026.10.30
三陽商会が立ち上げた新ブランド「AUREME(オーレム)」。防水性や透湿性などの機能を備えながら、ファッションとしての美しさと着心地を追求する日常着を提案している。
特徴的なのは、実現したい品質や機能から服づくりを始める姿勢だ。百貨店を主な販路としてきた三陽商会が、なぜこのアプローチで新たなブランドを立ち上げたのか。AUREMEを率いる執行役員の花木崇さんに話を聞いた。

2拠点生活で感じた気候の変化から始まった

AUREMEの出発点は、ディレクターの櫛部美佐子さんの実感にある。櫛部さんはかつて、東京と軽井沢で2拠点生活を送るなかで、年々気温が上がり、身の回りの自然が変わっていくのを肌で感じてきた。変化する気候の中でも快適に過ごせる服をつくりたいという思いを、10年ほど前から温めていたという。
「彼女がこの10年ぐらいずっとやりたいと考えていたことが前提にあります。『これからの環境の中で人がどう心地よく生きるか』という視点に共感して、プロジェクトが始まりました」
百貨店を主な販路としてきた三陽商会にとって、商業施設への展開は新たな挑戦でもある。約1年半の準備を経て、高感度な商業施設に集まる層をターゲットにブランドを立ち上げ、専用ECサイトも開設した。

目指すのは「第二の素肌」。入り口は機能ではなくファッション

AUREMEの2026年秋冬のシーズンビジュアル
ファッション性と機能性を両立した日常着を提案する(画像提供:AUREME)
「未来のための日常着」というコンセプトの裏には「第二の素肌」という考え方がある。機能のある服をつくるだけでなく、着ていることを忘れるほど軽く、素肌の延長のように感じられる着心地を目指す。気温や環境の変化によるストレスから解放され、空気をまとうような快適さを日常の中に取り入れる、という狙いだ。
機能を備えた服といえばスポーツやアウトドアのブランドが思い浮かぶが、AUREMEは出発点が違う。「『機能がいいからこの服を着たい』ではなく、入り口はあくまで『ファッションとしてこの服を着たい』。その先に、実はこういう機能も備わっている、というのが目指す姿です」

「ジェンダーレス」とも言わない

性別で対象を分けず、サイズは1・2・5の3つで展開する(画像提供:AUREME)
ブランドは当初から、性別で対象を分けていない。櫛部さんは「ジェンダーレス」という言葉も使いたくないという。その言葉自体が、結局は区別していることになってしまうからだ。
サイズは2を中心に、小さい1と大きい5の3つ。大きいサイズは商品全体の約2割を占める。店頭では、男性が2のニットを着たり、女性が5をゆったり着たりと、選び方は人それぞれだ。
5については、サイズを一律に拡大する「グレーディング」ではつくっていない。「単純なグレーディングでは、いい形になりません。同じデザインでも、もう一つ別のパターンを起こしているくらいの手間をかけています」

看板の「FUNCTION」は、まだ試行錯誤の途中

FUNCTIONカテゴリーの「ベルテックスアルファコート」
縫い目から水が入らないよう、シームシーリング加工を施している(画像提供:AUREME)
機能性とファッション性を両立する「FUNCTION」は、ブランドの看板となるカテゴリーだ。防水・透湿・撥水・防風機能を備える3レイヤーの生地を採用し、縫い目からの浸水を防ぐシームシーリング加工を含む縫製はすべてコート専業の自社工場「サンヨーソーイング 青森工場」で施している。肌に縫い目が当たる違和感を軽減する狙いもある。
しかし先に触れたように、AUREMEが目指すのは機能性だけを追求した服ではない。ファッションとしての美しさとアウトドアで使える機能を両立できる生地は非常に少なく、開発では試行錯誤が続いている。
「この生地の裏にフィルムをラミネートしたらどうなるか」と試作を重ねるなかで、意図しない波紋模様であるモアレが発生したこともあれば、生地メーカーから「これ以上の対応は難しい」と言われたこともあるという。
「まだ確立できていない、というのが正直なところです」と花木さんは語る。
それでも「FUNCTION」は、店頭とECの双方でもっとも売れているカテゴリーだ。機能性についても、日常生活で必要な性能を基準とし、それ以上のスペックを追うのではなく、ファッションとしての美しさと快適さの両立を目指している。

トワルで動きを確かめ、完成度の高いサンプルへ

2026-27年秋冬のライブエキシビジョンより
FUNCTIONのアウターも、着たときの美しさを優先してカッティングを決めている(画像提供:AUREME)
FUNCTIONに限らず、AUREMEがものづくりで重視しているのが「カッティング」だ。ジャケットの袖が突っ張るといった着用時のストレスを軽減するため、袖の構造にも工夫を凝らしている。
袖は身頃とつながりながら後ろで切り替えることで、腕を上げたときの可動域が一般的な袖付けとは大きく異なるという。それでも「動きやすさはもちろん大切ですが、着たときの美しさやかっこよさも妥協せずに追求しています」と花木さんは言う。
検証には、トワル(仮縫い用の見本)を1着分まるごとつくる。男女、背の高い人、小柄な人、さらにサイクリストや登山家、ヨガ講師といった人にも着てもらい、さまざまな動きを確かめてからファーストサンプルに進む。その分完成度が高く、サンプルの修正は基本1回で済む。
一方、肌への心地よさを重視する「COMFORTABLE」のカテゴリーでは、天然素材を中心に採用している。家庭で洗えるウールのTシャツや、洗えるシルクのニットなど、素材本来の機能を生かしたアイテムを展開する。

品質と着心地を起点に、定番として長く売る

素材選びからカッティング、サイズ設計まで、理想の着心地と美しさを追求するAUREME。その姿勢は、ものづくりの順番にも表れている。
「まず実現したい品質や機能があって、それを実現するものを探すところから始まっています」
着心地やシルエットを追求するため、生地の用尺やカッティングに妥協をしない。そのためシーズンごとに商品を入れ替えるのではなく、定番として定価で長く販売できる商品づくりを目指している。毎シーズンゼロからトレンドを追うのではなく、素材やフィッティングを更新しながら育てていく考えだ。質のいいものにこだわることが、結果として売り上げや収益に結びつくよう調整していくという。

服だけでなく、店づくりにも思想を反映

9月にオープンしたニュウマン新宿の店内(画像提供:AUREME)
紙のショッパーの代わりに販売する「AUREME キャリークロス」。リサイクルポリエステルを使った風呂敷状の布(画像提供:AUREME)
2026年9月には初の実店舗を開いた。空間づくりはフラワーショップと協業しており、植栽を活かした店舗デザインとなっている。紙のショッパーは使用せず、リサイクルポリエステルの風呂敷「AUREME キャリークロス」を、その意味を説明しながら販売する。服だけでなく、店の空間やコミュニケーションを通じて哲学を知ってほしいという、櫛部さんの考えの表れだ。今後はファッションビルを中心に店舗を広げ、主要都市での拠点づくりを進めていく考えだ。
「今年買ったものが5年後に着ても色褪せない、というものをつくりたい。長くAUREMEを着たいと思っていただける関係を築いていきたいです」
実現したい品質や着心地を優先し、長く着られる服をつくる。機能性とファッション性の両立を追求しながら、素材やフィッティングを更新し、定番として育てていく。AUREMEが目指す「未来のための日常着」には、そんなものづくりの考え方が込められている。

PROFILE

花木 崇(はなき たかし)

株式会社三陽商会 執行役員 事業統轄本部 事業本部 企画担当。2002年入社。「EPOCA」のMD、企画課長、ビジネス部長などを経て、2026年3月より現職。「EPOCA」の他に「CAST:」の立ち上げ・育成をはじめ、長年にわたりオリジナルブランドの商品企画・運営に携わる。現在は「AUREME」、「BIANCA」といった新ブランドを含むエポカビジネス部、およびコーポレートブランドビジネス部を管掌し、ブランド戦略と商品開発を推進している。

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