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ドリアン・ロロブリジーダ流、自分らしく輝くための「アンテナ」の磨き方
きらびやかな衣装、緻密に計算されたメイク、そして一瞬で空気を支配するステージ。ドリアン・ロロブリジーダさんが放つ存在感は、「派手さ」という言葉だけでは到底語り尽くせない。ドラァグクイーンという表現を通して、彼女は“美しさ”の在り方を刷新し続けている。
性別や常識、固定観念を軽やかに超えながら、見る者の感情に直接触れてくるその表現は、なぜこれほどまでに人を惹きつけるのだろうか。その華やかさの奥に息づく美意識や創作の源泉、影響を受けてきたカルチャー、そして表現者としての哲学──。ステージの外側にまで広がる彼女の表現を、紐解いていきたい。
PROFILE
ドラァグクイーンとの出会いと“化ける”美学
ステージ上で見る者の視線を一瞬で奪う圧倒的な存在感が印象的なドリアンさん。その一方で、言葉を選びながら語られる思考の深さもまた、多くの人を惹きつけている。彼女が自身の表現の核ともいえる「ドラァグクイーン」に出会ったのは、高校3年生の頃のことだった。
「近所に、仲良くしてくれるゲイのお姉さんたちのグループがあって、週に何度か一緒にご飯を食べたりカラオケに行ったりする、小さなサークルのような集まりがありました。高校生だった私も、時々そこに顔を出させてもらっていたんです。
そんなある年の年末、全員で女装してカラオケパーティーをすることになりました。そのメンバーのひとりが、昔ドラァグクイーンをやっていた方だったんです。その方がドラァグクイーンの装いで、ふっと会場に入ってきた瞬間を見たとき、『なんてかっこいいんだろう』って、本当に雷に打たれたような衝撃を受けました」
それから、そのお姉さんに少しずつメイクを教わりながら、見よう見まねで自分自身の顔にもメイクをするようになっていった。工程の多さや、繊細で時間のかかる作業に向き合うたび、「こんなにも大変なんだ」と驚くことも少なくなかったという。


それでもなお、心を強く掴んで離さなかったのが、ドラァグクイーンという存在の放つ圧倒的な輝きだった。強さと華やかさをまとい、ステージに立つその姿に受けた衝撃と憧れ。その感情が、ドリアンさんを自然とドラァグクイーンの世界へと導いていった。
ドリアンさんにとって、メイクで何より大切にしているのは文字通り“化ける”ことだという。
「ドラァグクイーンは、一人ひとりにそれぞれ異なる美学やルールがあると思うんですが、私自身がいちばん惹かれているのは、男性的なものが、がらっと、とんでもないビジュアルへ変わる、その“振り幅”なんです。その変化にロマンを感じているからこそ、オンとオフの差はできるだけ激しくありたい。そう思っています」
舞台衣装に映る、ドリアン流・表現のルール
YouTubeや歌手活動に加え、俳優としても活躍するドリアンさん。2026年4月には、初主演舞台『DURIAN DURIAN』の上演を控えている。
彼女が演じるのは、ファッション業界を舞台に、ファッションウィーク直前の緊張感に包まれるカリスマファッションデザイナーだ。
「キービジュアルの撮影にあたっては、衣装について現場で何度も議論を重ねました。いくつか候補があったなかで、立ち返ったのは『デザイナーはあくまで裏方である』という視点です。
奇抜なドレスや大きく盛り上がったかつらは、あくまでランウェイを歩く人のためのもの。最終的には、ジャケットスーツをベースにしつつ、随所に“アク”の強さがにじむような、『少し目立ちたがり屋なデザイナー』を彷彿とさせるスタイルに落ち着きました。主張はしすぎないけれど、確かな存在感がある。そんな人物像を意識しています」
こうした役ごとの最適解を模索する柔軟な姿勢は、これまでのステージでも一貫している。衣装制作を依頼する際は、プロの感性に全幅の信頼を置く。
「制作の方にはあまり細かい指定をしません。相手のほうが知識も経験もあるので、『あなたがドリアンに着せたいものを作ってほしい』とお願いすることが多いんです。その人の世界観とドリアンがぶつかって起きる化学反応や、『自分はこういうふうに見えているんだ』と気づかされる瞬間が面白いんです」
プロの技術を敬う一方で、彼女はドラァグクイーンを取り巻く「衣装の調達環境」の変化も冷静に分析している。
「ドラァグクイーンにおけるファッションの世界にも、やはりトレンドの変化はありますね。2010年代以降は、ファストファッションが一気に広がりました。女性物のアイテムを手頃な価格で買えるようになり、既製品をそのまま着るだけでなく、アレンジや組み合わせによって表現の幅が大きく広がった時代でした。象徴的だったのは、フォーエバー21とH&Mの存在です。
さらに、AliExpressやSHEINといった海外通販の普及も大きな変化でした。派手で大胆な衣装が手頃かつ簡単に手に入るようになり、ドラァグクイーンの表現の選択肢は確実に広がったと感じます。
ただ、ECアイテムだけでは“高級感”や“非日常性”を表現するには物足りない。最終的には仕立てやオーダーが必要になります。とはいえ、ドレスは一着15万〜20万円かかることもある。だからこそ、重要なのは『組み合わせ』です。既製品や海外通販アイテムを取り入れながら、要所でオーダーやリメイクを加える、そのバランスこそが今の時代のスタイルだと思います」

衣装に関して特定のルールは設けていないが、ひとつだけ彼女が守り続けている姿勢がある。
「あまり型にはめないようにしています。いろんな格好をしたいですし、私がドラァグクイーンに惹かれる理由のひとつは、万華鏡のように、あらゆる世界観を体現できるところです。クラシカルな美女にもなれるし、宇宙人のような存在にもなれるし、羽織袴姿だって成立する。そこまで振り幅があるのが、ドラァグクイーンの最大の魅力だと思っています。
だからこそ、衣装に関しては常に“裏切りたい”という気持ちがある。最近クラシカルだなと思われていたら、次は突拍子もないことをするし、最近は派手だなと思われるようなら次は思いきり正統派の美人になってみたい。そうやって、世間のイメージや期待を、いい意味で“裏切り続けたい”と思っています」
人生というステージで“好き”を貫くということ

ドリアンさんが人を惹きつけるのは、華やかさだけではない。芯の強さとぶれない美学、そして博識な知性が重なり合うからこそ、唯一無二の存在感を放っている。日常の中で自身の表現を磨くためのヒントを尋ねると、彼女はこう答えた。
「正直、インスピレーションの源って、何でもいいと思うんです。人が100人いれば、アンテナも100通りある。そのアンテナに引っかかるものも、それぞれ違っていていい。だからまずは、自分の“好き”を見つけることが大事なんじゃないかなって思います。私自身も、やっぱり好きなものからインスピレーションを受けている気がしますね」
それは、彼女が掲げる「The show must go on」という哲学にも通じている。人生という舞台に立つ以上、誰もが自分自身の作品における主演俳優なのだ。
「私は、崇高なものを表現しているとか、アートを体現している、みたいな自覚は全然なくて、ただ自分の好きなことをやっているだけなんです。でも、続けているうちにステージが大きくなったり、多くの人に見ていただける機会が増えたりして、それは本当にありがたいなと思っています。
何より、好きなことをしているときの自分がいちばん好きなんですよね。だから、何をしている自分が好きか、どんな服を着ている自分が好きか、そういうことを見つけていくのが人生なのかなって思うんです。皆さんも、自分の“好き”を見つけていければ、人生はもっとキラキラするんじゃないかなと思います」
ドリアン・ロロブリジーダの表現は、特別な誰かになるためのものではない。自分の“好き”に正直であること、その感覚を信じ続けること。ドラァグクイーンという装いを通して彼女が示しているのは、人生という舞台をどう生きるか、その姿勢そのものだ。
ステージの上でも、日常の中でも──ショーは、今日も続いていく。
<公演概要>
舞台『DURIAN DURIAN』(読み:ドリアン・ドリアン)
期間:2026年4月18日(土)〜4月26日(日) 計11公演 ※開場時間は開演の45分前
出演:
脚本・演出:村角太洋(THE ROB CARLTON)
出演:ドリアン・ロロブリジーダ
雷太 神里優希 村角ダイチ(THE ROB CARLTON)
岩瀬亮 飯原僚也(ダウ90000)
会場:
I’M A SHOW(東京都千代田区有楽町2丁目5番1号有楽町マリオン(有楽町センタービル)別館 7F)
URL:https://durian-durian.srptokyo.com/
Text by Tajimax











