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「あの」や「FRUITS ZIPPER」で知られる衣装デザイナー・MIYA NISHIYAMAが語る、唯一無二の“かわいい”が生まれるまで
あの、FRUITS ZIPPER、虹のコンキスタドール、噂のりっくんなど、人気アイドルやアーティストのコスチュームを多数手掛ける衣装デザイナーのMIYA NISHIYAMA氏。自由な発想で生み出される唯一無二の“かわいい”世界観は、絶大な人気を集めている。
ブランドスタートから10周年を迎え、作品をまとめた写真集『TEN #衣装 #アイドル #カワイイ #MIYANISHIYAMA』も2024年10月に上梓。意外なきっかけで衣装デザインの道に飛び込んだというユニークなキャリアや、衣装を生み出す上でのこだわりなどを、本人に詳しく語ってもらった。
PROFILE
「始球式の衣装作り」を機にデザイナーの道へ
NISHIYAMAさんは服飾学校に通っていないなど、衣装デザイナーとしては異色の経歴をお持ちですよね。服を作ることは、昔からお好きだったんですか?
人並みだったと思います。母が洋服や服作りが好きで、手作りの子ども服を着せてくれていたので、その影響で私も小学生の頃からミシンに触るようになって。筒状に縫ってかぶせるような簡単なものばかりですが、リカちゃん人形の服を自分で作ったりしていました。でも、服飾を仕事にしようと思ったことはなかったですね。地元福岡でデザイン科のある大学に行ったんですけど、楽しくなくて。
東京の大学を受け直そうと上京したものの、バイトをしながら予備校に通う生活に疲れ果ててしまい、アパレルの会社に就職したんです。ずっと、やりたいことがあるようでないような、そんな感じで過ごしてきました。
そこからどのように、衣装制作の道へ?
10年ほど前にアパレルの会社を退職し、知人の手伝いで台湾のコーディネーターを務めながら、並行してデザインの仕事も手掛けていた時期がありました。そのときにご一緒した方から、「私立恵比寿中学の廣田あいかさんが広島カープの始球式で着用する衣装のデザイナーを探している」と聞いたんです。
当時ぁぃぁぃ(廣田)は「たまこちゃんとコックボー」というアニメの声優を務めていて、そのキャラクターをイメージした衣装を作りたいということでした。
当時の私は、家でクッションカバーやシュシュを縫っていたくらいの裁縫レベル。なのに、自分でもなぜかわからないんですが、その依頼を引き受けたんです(笑)。当時の仕事に飽きていたからかもしれないです。

着用写真を見ると、着ぐるみのようなとても凝ったデザインで、とても初めてとは思えない完成度ですよね。そこから本格的に、衣装デザイナーとして歩み出したんですか?
いえ、最初は「面白い体験ができたな」くらいで、こんなに長く仕事として続けるとは思っていませんでした(笑)。でも始球式の衣装を見た友人から、少しずつ依頼を受けるようになって、たまに服を作っていたんです。ある日、関わったバンドの展示で私の衣装を見た装苑の編集者さんから「特集を組みたいです」と言っていただいたのをきっかけに、ブランド名を決めたのが10年前。衣装制作の仕事だけに注力するようになったのが6、7年前ですね。
自分にしか作れないものを作りたい
一点ものの洋服を販売している期間もありましたよね。今は衣装制作のみをされているんでしょうか。
通常の洋服の販売は5、6年前で終了して、今は衣装制作に注力しています。私は日常着を作るより、特別感のある服が好きなんだと思います。他の人ができることなら、別に私がやらなくてもいいかなって。衣装の依頼をいただいた際も、内容によっては買ったほうが安い場合もあるので、そう伝えることもあります。
私じゃないと作れないものを作りたいと思っていますし、「私だから作れる衣装」を求められるのはうれしいです。
どんなふうにデザインを考え、完成に至るのか……衣装が出来上がるまでの過程を、FRUITS ZIPPERさんのデビュー時の衣装を例に教えていただけますか?
FRUITS ZIPPERさんが所属しているアソビシステムは、きゃりーぱみゅぱみゅさんをはじめ日本だけはでなく世界で活躍するアーティストが多いところから、宇宙っぽいイメージが湧いてきたんです。キラキラふわふわではなく、少し尖っている、おしゃれなイメージで考えていきました。シルバーの生地をメインに使い、ビニールやエナメルなどの異素材も提案していきましたね。

NISHIYAMAさんのデザインといえば、ボリューム感やさまざまな生地の組み合わせなどに目を引かれます。ご自身としては、自分の衣装の特徴はどのような部分にあると感じていますか?
異素材やありえない大きさのリボンとか、普通ではあまり見ない組み合わせが好きなんですよね。可愛いけど、ちょっと怖い大きさってあるじゃないですか。たとえば猫はめちゃくちゃ可愛いけど、もし10メートルくらいの大きさだったら怖いよね、とか(笑)。そういう感覚が好きで、無意識に衣装にも入れている気がします。「このくらいのフリルが適量だろうけど、100倍付けちゃえ」みたいに。引き算、割り算より、足し算、掛け算が好き。
制作費が膨らんだときは、裏地を変えるなどで調整していますね。流行はよくわからなくて、何かを狙ってやっているというよりは、完全に自分の好みで作っていると思います。
あとは、ステージでの映え方は重視しますね。照明との相性が大事なので、色を吸収してしまう黒はあまり使わないです。
もし自分がイメージしたデザインを叶える生地や材料が手に入らないときは、どう調整していきますか?
テキスタイルデザインから手掛けて、オリジナルの生地を発注して作ることもあります。生地にグループのロゴを入れてみたり、ナナコロビヤオキという大阪のグループの衣装のときは、たこ焼きの柄にしてみたり……。あまり目立たないところにも、こだわりを入れています。

衣装デザイナーとして駆け抜けた10年
10月には、10周年記念本『TEN #衣装 #アイドル #カワイイ #MIYANISHIYAMA』が刊行されました。表紙は新作衣装をまとったあのさんの撮り下ろし写真が飾っていますね。
あのさんとはデビュー前からの長い知り合いで、少し原石感がある感じや、宝石っぽい感じを衣装で表現できたらいいなと考えてデザインしました。ポンチョはワンピースと繋がっていて、いろいろな生地を組み合わせています。

この先挑戦してみたいことは?
衣装に関してはやりたいことを十分やってきた感覚があるので、まったく違うお仕事をやってみたいですね。以前、アニメ「五等分の花嫁」のキャラクターの衣装をデザインさせてもらったことがあったんですが、すごく楽しかったんですよ。
理想の生地を探さずとも作れるし、絵には重力がないから、いくらでもフワッとさせられる。そういう2次元のお仕事ももっとしてみたいですね。
あとは最近ラジオに出させていただくことも多くて、そうした形に残らないお仕事をしてみたいです。
衣装に関しては、誰が着ても可愛いと思われるものを作りたいというか、もう少しブランドとして独り立ちしたい。
MIYA NISHIYAMAが、「あのちゃんが着ている衣装を作った」という冠がいらなくなるような、服だけで写真集が作れるくらいのブランディングができるようになりたいです。
アイドルやアーティストからも厚い支持を得るMIYA NISHIYAMA。オリジナル生地の制作を手掛けるほどのこだわりと、独創的な素材の組み合わせによって紡ぎ出される唯一無二の“かわいい”世界観は、多くの人を魅了し続けている。
ヘッダーキャプション:「TEN #衣装 #アイドル #カワイイ #MIYANISHIYAMA」(玄光社)
Text by 岸野 恵加







