奄美から世界へ──大島紬の技を未来へ紡ぐ職人の挑戦
2025.10.24
奄美から世界へ──大島紬の技を未来へ紡ぐ職人の挑戦
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世界でもっとも緻密な織物と称される「大島紬」。1300年の歴史を持つこの伝統工芸は、奄美の自然風土と人々の営みによって受け継がれてきた。しかし現代においては後継者不足や市場の縮小など多くの課題に直面している。その只中で、伝統の技を受け継ぎつつ、新たな布「奄美布(あまみふ)」を生み出したはじめ商事。守るべきものは何か、変えていくべきものは何か──奄美から世界へと挑む姿を追った。
PROFILE|プロフィール
元 允謙(はじめ ただあき)
元 允謙(はじめ ただあき)

有限会社 はじめ商事
代表取締役

思いがけない大島紬との出会い

はじめ商事は1982年に創業。祖父が製造を担い、父が全国を巡って販路を開拓することで、奄美の織元と都市部の呉服店をつなぐ役割を果たしてきた。もともとは「問屋」としての機能を担い、百貨店の催事や物産展で大島紬を広めることに注力してきたのである。

その道筋は一見盤石のように見えたが、家業を継ぐ次の世代は必ずしも同じ歩みを志してはいなかった。理系大学に進学し、映像や音楽の研究に没頭していた元さんにとって、着物は遠い存在であり、家業を担う未来を描いてはいなかった。しかし、奄美で過ごした夏休みに偶然織りの現場を訪ねたことが、大きな転機となった。

そこでは、若い研修生たちが自由な発想で柄を織り込んでいた。伝統を守りながらも現代的な表現を模索するその姿に触れ、大島紬を「古いもの」ではなく「新しい創造の場」として捉えるようになったのである。これを機に工芸の世界へと歩みを進め、やがて家業を継ぐ決断に至った。