【第5回(最終回)】人間国宝・前田昭博が伝統工芸 白磁に思いを馳せる
2025.12.29
【第5回(最終回)】人間国宝・前田昭博が伝統工芸 白磁に思いを馳せる
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白磁はその白さと造形からもわかるように、小手先のテクニックなどまったく通用しない芸術品である。だからこそ、作品ひとつ制作するだけでもたゆまぬ努力が求められることは、ここまで辿ってきた前田昭博さんの人生が証明している。その前田さんの作品の魅力や技術、陶芸家としての精神が認められ、2013年に人間国宝に認定された。
最終回では、作家として最高となる評価を得た今、前田さんはこれまでの人生をどう振り返るのか。また、伝統工芸を未来へと繋いでいく者として、何を思うのか。その心情をお聞きした。

人間国宝としての心境の変化

2013年にその功績が認められ、前田さんは人間国宝になった。伝統工芸に携わる者としてこれ以上ない評価だが、あるとき前田さんは、小学生から投げかけられた「前田さんの最終目標は何ですか」という問いにハッとさせられたという。

「人間国宝になって、かつてのグループ・サウンズのようになりたいと思いました。一昔前グループ・サウンズの演奏ライブを鑑賞した人たちが、そのカリスマ性に感化されて、涙を流していましたよね。

それと同じように、僕の作品に見惚れて、その場に何分も立ち止まるような白磁を作りたいと思っています。それが初心でもあったのですが、あらためて小学生の言葉に気づかされました」

この小学生の質問はある種のお叱りだったと振り返る前田さんは、白磁に向き合いながらも、人間国宝として工芸全体の活性化に向けた活動も展開するようになる。

2024 白瓷捻面取酒器 撮影:斎城卓
2024 白瓷捻面取酒器 撮影:斎城卓