2013年にその功績が認められ、前田さんは人間国宝になった。伝統工芸に携わる者としてこれ以上ない評価だが、あるとき前田さんは、小学生から投げかけられた「前田さんの最終目標は何ですか」という問いにハッとさせられたという。
「人間国宝になって、かつてのグループ・サウンズのようになりたいと思いました。一昔前グループ・サウンズの演奏ライブを鑑賞した人たちが、そのカリスマ性に感化されて、涙を流していましたよね。
それと同じように、僕の作品に見惚れて、その場に何分も立ち止まるような白磁を作りたいと思っています。それが初心でもあったのですが、あらためて小学生の言葉に気づかされました」
この小学生の質問はある種のお叱りだったと振り返る前田さんは、白磁に向き合いながらも、人間国宝として工芸全体の活性化に向けた活動も展開するようになる。
