暮らしに寄り添う輝き、江戸切子の役割の変遷と現代における価値
会員限定記事2026.02.18
暮らしに寄り添う輝き、江戸切子の役割の変遷と現代における価値
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先日、友人の家で冷たいお茶をいただいたときのことです。何気なく差し出されたグラスにふと目をやると、繊細なカットが施された、美しい江戸切子でした。これまで私にとって伝統工芸の器は、特別な日に使うもの、あるいは飾り棚に仕舞っておくもの、という少し遠い存在でした。しかし、日常の何気ない場面で使われているその姿は、とても自然で、その場の空気を豊かにしているように感じられたのです。モノとの付き合い方、暮らしの豊かさとは何かを、改めて考えさせられた出来事でした。

憧れの対象としての誕生

江戸切子の歴史は、江戸時代後期に始まったとされています。当時のガラス製品は非常に貴重でした。そこに精緻な彫刻を施した江戸切子は、一部の特権階級や富裕な町人層だけが手にできる、極めて高価な奢侈品だったのです。その主な役割は、日々の暮らしで使う実用的な器としてではなく、宴席などで自らの社会的地位や財力を示すためのステータスシンボルとしての意味合いが強かったと言われます。

この時代の江戸切子は、庶民の生活からはかけ離れた存在でした。人々がその輝きを目にする機会は限られており、まさに「憧れの対象」であったことがうかがえます。使われる場面も、日常的な食事の場ではなく、客をもてなす特別な席や、贈答品として用いられることが中心でした。この段階では、江戸切子は個人の楽しみというよりも、社会的な関係性の中でその価値を発揮する工芸品だったと言えるでしょう。

画像提供:江戸切子協同組合
画像提供:江戸切子協同組合

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