道後とともに醸すということ:水口酒造
2026.03.09
道後とともに醸すということ:水口酒造
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130年以上の歴史を持つ水口酒造は、道後温泉という日本有数の観光地の中心で酒を醸し続けてきた。温泉と酒、観光と工芸、伝統と革新。それぞれが独立して見える要素を、矛盾なく一つの思想に束ねている点に、この蔵の特異性がある。
日本酒を「土地の文化を体験するための媒体」と捉える水口酒造の酒づくりは、味覚の領域を超え、土地と人の関係性そのものを形にしている。
PROFILE|プロフィール
水口 皓介(みなくち こうすけ)
水口 皓介(みなくち こうすけ)

1987年7月生まれ、現在38歳。
大学卒業後、東海道新幹線や中央新幹線のシステム開発に従事し、2019年11月に帰松。
2024年10月より六代目蔵元に就任。

道後温泉と酒蔵が共有する時間軸

水口酒造の創業は1895年。道後温泉本館が現在の姿へと建て替えられた翌年にあたる。この時間的な近接は、単なる偶然以上の意味を持っている。

道後という土地は、温泉を中心に「人が集い、楽しみ、帰っていく」ことを前提に形成されてきた場所だ。酒蔵もまた、その流れの中に自然と組み込まれてきた。

当時の道後では、温泉を単なる湯治の場から「文化を体験する場」へと転換する構想が進められていた。水口酒造が大切にしてきたのは、その思想と歩調を合わせることだった。

酒は単独で完結するものではなく、旅の時間や土地の記憶と結びついて初めて意味を持つ。その考えは「道後物語」という言葉に集約されている。

観光地の中心に蔵を構えることは、職人にとって常に開かれた環境で仕事をすることを意味する。閉じた工房ではなく、人の往来がある日常空間で酒を醸す。その緊張感と公共性が、酒づくりの姿勢そのものを形づくってきた。