
平尾は、もともと盆栽の家系に生まれたわけではない。大学までは陸上競技に打ち込み、将来もまったく別の道を思い描いていた。転機は、京都・東福寺で見た庭園だった。
「正直、最初はよく分からなかったんです。でも、しばらく立ち止まって見ているうちに、これは“時間”をながめているんだな、と思いました」
完成した形よりも、そこに積み重なった時間に惹かれた。その感覚が、盆栽という世界へ足を踏み入れるきっかけになった。
師匠の言葉も、平尾の背中を押した。
「盆栽を、国内外問わず伝えられる人間になってくれ」
その言葉通り、平尾は海外へ出ていく。25ヶ国以上で、デモンストレーションやワークショップを行ってきた。だが、海外で盆栽を紹介するほど、違和感も募っていった。
「形や作り方は伝わるんです。でも、それだけだと、どうしても表面的になる」
盆栽は、決められた完成形を再現するものではない。木の状態を見て、その都度判断し、時間をかけて変えていくものだ。
「そこが、一番伝わりにくいんですよね」
