引き込まれそうに黒い名古屋黒紋付染、山勝染工が探る伝統産業の新しい形
2026.05.01
引き込まれそうに黒い名古屋黒紋付染、山勝染工が探る伝統産業の新しい形
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黒が黒い。名古屋黒紋付染を形容する上で、もっとも的確な表現である。慶長16(1611)年、尾張藩士が旗や幟などの製造を始めたことを起源とする名古屋黒紋付染は、天保年間(19世紀半ば)に独自の「紋型紙板締め技法」を考案。明治に入ってからは板が金網へと改良され、「紋当金網付け技法」となって今に続いている。この名古屋黒紋付染を家業とする、大正8年創業の山勝染工を訪ねた。
PROFILE|プロフィール
中村 剛大(なかむら たけひろ)
中村 剛大(なかむら たけひろ)

山勝染工 代表取締役社長

黒が黒くなるための名古屋独自の技術

名古屋城の西、ここは昔から職人が集う町だ。山勝染工もそんな町の雰囲気を作り出している会社の一つ。柔和な笑顔で案内してくれたのは社長の中村剛大さん。敷地奥にある染物工場に足を踏み入れると、染浴槽の湯気で外気より一段高くなった湿度が、もわっと私の体を包んできた。

「着物の場合は90度で約1時間、洋服の場合は60〜70度の温度で約2時間半、5分に1回、手作業で生地を上下させながら染めています」

紋当金網付け技法とは、紋の形をした紋型紙を当てて、金網で生地を挟み縫い付けることによって染料が入り込むのを防ぐ技術。紋型紙は染液に浸ると膨張するため、より生地を圧迫し、紋の部分への染料の染み込みが防がれる。白く残った紋の形に、紋章上絵師が家紋を描き入れて完成だ。

名古屋黒紋付染の特色である黒色は、紅下染めという技法を用いる。生地の5%程度の量にあたる紅の染料を、熱湯に溶かして染液を作り染める。黒染色のみだと、深みのある黒が十分に出ないためである。紅下染めをした後は、生地を通常より濃い濃度の黒で染めていく。その後、染色後に色を止めるため生地を水に一昼夜つけて、色褪せにくい黒を作り出す。

「アパレル業界の人に言われたんです。『黒が黒いよね』と。ここがすごいということを、私たち自身はあまり気づいていませんでした」

黒が黒い。これは山勝染工が、これまで携わってきた以外の分野へ足を踏み入れるきっかけとなった言葉だ。