
東京・八王子で三代続く澤井織物工場の代表であり、東京都指定伝統工芸品「多摩織」の伝統工芸士。手織りからシャトル織機まで幅広い技法を用い、糸の表情を活かした独自のテキスタイル開発に取り組んでいます。国内外のブランドやクリエイターとの協業実績も重ね、伝統技術を基盤に現代のニーズに応える素材づくりを進めています。地域に根ざした技と感性を活かし、日常に寄り添う布の可能性を探求し続けています。
八王子は古くから養蚕が盛んであり、生糸や織物の集散地として発展してきた歴史を持つ。澤井家のルーツもまた、この地の産業史と深く結びついている。家系はもともと新潟から移り住んだ武士であり、その後、漢方医を経て養蚕を始め、4代前から織物の道へと進んだという。
長きにわたり着物産業を支えてきた同社だが、バブル崩壊とともに大きな転換期を迎える。着物需要の低迷を受け、新たな活路をファッションアイテムに見出した。そのきっかけは、一本の帯揚げだった。
「友人の持っていた着物の帯揚げからヒントを得て、ストールを作りたいなと思いました。それからストールを作り始めたのが30年くらい前のことです。バブルがはじけてちょっと経ったくらいでした」
この出来事をきっかけに、伝統的な和装の技術を、現代のライフスタイルに適合させる挑戦が始まった。ニューヨークでの展示会にも積極的に参加し、海外市場へのアプローチを試みる。しかし、その道のりは平坦ではなかった。取引先の倒産など、幾多の困難に直面しながらも、見本作りを通じて技術を磨き続け、国内アパレルメーカーとの信頼関係を築き上げていった。
