澤井織物が示す多摩織の技術と進化、境界を超えるものづくり
2026.02.19
澤井織物が示す多摩織の技術と進化、境界を超えるものづくり
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かつて「桑の都」と呼ばれ、養蚕と織物で繁栄した東京都八王子市。この地で120年以上の歴史を刻み、伝統的工芸品「多摩織」の技術を継承するのが有限会社澤井織物だ。19代目当主である澤井伸さんは、伝統的な着物生地の製織に留まらず、海外メゾンへの素材提供や異業種とのコラボレーション、さらには廃棄素材のアップサイクルまで、織物の可能性を広げ続けている。
PROFILE|プロフィール
澤井 伸(さわい しん)
澤井 伸(さわい しん)

東京・八王子で三代続く澤井織物工場の代表であり、東京都指定伝統工芸品「多摩織」の伝統工芸士。手織りからシャトル織機まで幅広い技法を用い、糸の表情を活かした独自のテキスタイル開発に取り組んでいます。国内外のブランドやクリエイターとの協業実績も重ね、伝統技術を基盤に現代のニーズに応える素材づくりを進めています。地域に根ざした技と感性を活かし、日常に寄り添う布の可能性を探求し続けています。

桑の都・八王子で120年。着物からファッションへの転換

八王子は古くから養蚕が盛んであり、生糸や織物の集散地として発展してきた歴史を持つ。澤井家のルーツもまた、この地の産業史と深く結びついている。家系はもともと新潟から移り住んだ武士であり、その後、漢方医を経て養蚕を始め、4代前から織物の道へと進んだという。

長きにわたり着物産業を支えてきた同社だが、バブル崩壊とともに大きな転換期を迎える。着物需要の低迷を受け、新たな活路をファッションアイテムに見出した。そのきっかけは、一本の帯揚げだった。

「友人の持っていた着物の帯揚げからヒントを得て、ストールを作りたいなと思いました。それからストールを作り始めたのが30年くらい前のことです。バブルがはじけてちょっと経ったくらいでした」

この出来事をきっかけに、伝統的な和装の技術を、現代のライフスタイルに適合させる挑戦が始まった。ニューヨークでの展示会にも積極的に参加し、海外市場へのアプローチを試みる。しかし、その道のりは平坦ではなかった。取引先の倒産など、幾多の困難に直面しながらも、見本作りを通じて技術を磨き続け、国内アパレルメーカーとの信頼関係を築き上げていった。

とても柔らかく伸縮性があり、しかも洗えるという楊柳(ようりゅう)ストール
とても柔らかく伸縮性があり、しかも洗えるという楊柳(ようりゅう)ストール