消滅への抵抗──織りと染めが出会うとき(ハンナ・ウォルドロン)
2026.02.26
消滅への抵抗──織りと染めが出会うとき(ハンナ・ウォルドロン)
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PROFILE|プロフィール
ハンナ・ウォルドロン
ハンナ・ウォルドロン

1984年ロンドン生まれのイギリス人アーティスト。植物由来の素材を用いた織物を軸に、インスタレーション作品を制作する。
2014年、ストックホルムのコンストファック工芸芸術大学にて修士号(MFA)を取得。スウェーデンのクラフト思想に影響を受け、現在はコーンウォールのスタジオを拠点に、独自のタペストリー表現を探求している。デンマークのHay Award、スウェーデンのHemslojden Marta Gahns Award、オーストラリアのIrene Davies Awardなど、織物において数々の賞を受賞。スウェーデン、イギリス、日本、フランスでコンテンポラリー・タペストリーのワークショップやコースを教えるほか、ファルマス大学の修士課程(MA Authorial Practice)のシニア・レクチャー(非常勤)も務めている。

https://www.hannahwaldron.co.uk/

染めた経糸と染めた緯糸が交わり��、精密な模様を形成する絣織りの工程<br>写真提供:Hannah Waldron
染めた経糸と染めた緯糸が交わり、精密な模様を形成する絣織りの工程
写真提供:Hannah Waldron

素材と想像力が出会う場所

手仕事による織物には、それに関わるアーティストを魅了してやまない不思議な力があります。

少なくとも、過去15年間にわたり織りと染めに携わってきたアーティストとしての私の経験は、そうしたものでした。手仕事で織物を扱うこと、つまり生の植物や動物の繊維を織物・アートの領域で見られるレベルにまで引き上げるには、忍耐と時間、そして献身的な労働を要する無数の工程が必要です。こうしたプロセスがもっとも情熱的に表れているのが、日本の織物文化である「絣(かすり)」の織りと「筒描き(つつがき)」に見られる「染め」と「防染(ぼうせん)」の工程です。私は幸運にも、日本を訪れた際にこれらの工芸の巨匠たちと共に活動し、その技を直接体験することができました。

絣織りと筒描きの骨の折れるほど長い工程は、時に計り知れないほどの献身と情熱を要求します。それは素材と想像力の出会う場であり、自然の中に、そして私たちの奥深くに潜む錬金術的かつ数学的な工程との深い関わりを通じて、一種の魔法のように感じられるのです。

ベルリンで見つけた「織物の極地」

私が芸術表現としての織物に初めて出会ったのは15年前、ベルリンに住んでいた頃のことです。そこでアンニ・アルバースやグンタ・シュテルツルといったアーティストの手による、バウハウスのタペストリーを目にしました。

「形態」「技術」「素材」がひとつに溶け合うその複雑さと美しさに触れた瞬間、私の中に、自分もこれらを用いて表現したいという強烈な衝動が芽生えました。それはまさに「何かにとり憑かれた」としか言いようのないほどの情熱でした。

その経験が私を探求の旅へと連れ出し、人生にはよくある不思議な巡り合わせによって、翌年、私は日本を訪れることになりました。そこで、素材を介して工芸と芸術が交わるその核心に触れたとき、織物という表現が到達しうる究極の姿を目の当たりにしたのです。