色を重ね、時を紡ぐ──中金硝子が支える江戸切子の表現
2025.12.19
色を重ね、時を紡ぐ──中金硝子が支える江戸切子の表現
※音声読み上げ機能はAI生成のため、
読み間違いが発生する場合があります。
リンクをコピーしました
※音声読み上げ機能はAI生成のため、
読み間違いが発生する場合があります。
東京都江戸川区にある中金硝子総合株式会社は、昭和21年(1946年)から江戸硝子を作り続ける工房だ。
創業者の中村金吾が開発した、ポカン工法による2色重ねた「中金色被せ硝子」は、それまで透明であった江戸切子に豊かな色彩表現を与えた。江戸硝子の奥深い色を守り続ける、中金硝子総合株式会社の挑戦を聞く──。
PROFILE|プロフィール
岩渕 道子(いわぶち みちこ)
岩渕 道子(いわぶち みちこ)

中金硝子総合株式会社 取締役。中村金吾により創業された中金硝子製作所(現中金硝子総合株式会社)で、創業以来2色の硝子を重ねて吹く『中金色被せ硝子』を製造し、江戸切子の普及に貢献している。

江戸切子の色表現を支える、影の功労者

江戸硝子のルーツは、明治9年(1876年)に始まった国営硝子工場「工部省品川硝子製造所」にある。経営が難しく、民間委託などの変遷を経て、数年で事業は終了となった。

「硝子工場の経営は難しいんですよ。高い技術を持った職人も多く必要ですし、材料費もかかる。手間をかける必要がある。なにより炉は、365日ずっと火を入れていなくてはならないんです」

しかし、そこから腕のいい職人が育ち、江戸硝子職人としてそれぞれの道を進むようになる。同社もそのひとつ。優れた吹きの技術を持っていた創業者中村金吾は、2色の被せ(きせ)硝子の工法を変革した「ポカン工法」を編み出した。

「それまで2色硝子は透明な硝子と色硝子を別々に吹き、温め直して作るヨーロッパ伝来の工法で作られていました。初代は2色を同時に作り、薄く重ねる技法を編み出したのです。型から取り出すときに出る音から、ポカン工法と呼んでいます」