400年の伝統を纏い、世界に挑む会津木綿
2025.06.16
400年の伝統を纏い、世界に挑む会津木綿
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夏は酷暑、冬は極寒。山々に囲まれた福島県・会津地方では、盆地特有の厳しい気候の中で「会津木綿」が育まれてきた。その歴史は400年前にさかのぼる。時の会津藩主・蒲生氏郷(がもう うじさと)が、城下町の新たな産業として綿花の栽培をしたことがはじまりだ。以来、この地の風土と人々の手によって、現代まで紡ぎ続けられてきた。
そんな会津木綿に新たな息吹を吹き込み、現代の暮らしに寄り添うものづくりをしているのが「株式会社はらっぱ」だ。その母体となるのが、1899年(明治32年)創業の織元・原山織物工場。はらっぱでは、伝統の織りを支えるこの工場を拠点に、オリジナルブランド「HARAPPA」を展開している。今回は、原山織物工場を訪ね、会津木綿の魅力を探った。
PROFILE|プロフィール
矢作和歩(やはぎ  かずほ)
矢作和歩(やはぎ かずほ)

宮城県仙台市出身。靴下メーカーでアパレルのものづくりに携わるなか、日本の伝統的な技術や素材に興味を持つようになる。全国の工場を自ら訪ね歩き、現場で学びを深めてきた。「株式会社はらっぱ」代表・山崎ナナさんの記事に惹かれたことをきっかけに会津木綿と出会い、直接会いに行ったことで現在の道が開かれ、同社にてスタッフとして勤務している。

厳しい気候風土から生まれた会津木綿

会津木綿について教えてください。
会津木綿は、福島県会津地方で江戸時代から織り継がれてきた伝統的な綿織物です。

夏は厳しい暑さに見舞われ、冬は雪深く冷え込む会津の盆地気候。そんな環境に適した性質を持つ会津木綿は、夏はさらりと涼しく、冬は体温を逃がさず、あたたかさを保ってくれます。

もともとは農作業用の野良着として親しまれてきたため、とても丈夫で、日常使いに最適です。糊付けされた経糸を使っているため、はじめはごわつきがありますが、使い込むほどにやわらかさが増し、やがてはとろけるような質感へと変化していきます。昔の人々の知恵が詰まった、暮らしに根ざした織物です。

素朴ながら美しい縞模様も印象的ですね。
会津木綿の縞模様は、江戸時代に村ごとに生まれた「地縞」と呼ばれる柄がルーツです。地域によって縞の太さや色合いが異なり、それぞれの土地を象徴する“地域のユニフォーム”のような存在でした。

株式会社はらっぱが展開するブランド「HARRAPA」では、伝統的な柄に加えて新たにデザインしたものも含め、約120種類の会津木綿を生産しています。「かつお縞」や「はで縞」など、それぞれの縞模様には一つひとつ名前がつけられているのも特徴です。

1つの縞を織り上げるまでには、織りはじめる前の準備だけでも3日ほどかかります。なかでも重要なのが「整経」と呼ばれる工程です。縞模様をつくるには、色の順番や幅を正確に設定し、レシピに沿って経(たて)糸を一本一本順番に張っていく必要があります。さらに、緯(よこ)糸との組み合わせも調整しながら、手間を惜しまず、丁寧に縞模様を形づくっていくんです。
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