丸編みニットの常識を超える、カネマサ莫大小の超高密度技術
2025.10.28
丸編みニットの常識を超える、カネマサ莫大小の超高密度技術
※音声読み上げ機能はAI生成のため、
読み間違いが発生する場合があります。
リンクをコピーしました
※音声読み上げ機能はAI生成のため、
読み間違いが発生する場合があります。
和歌山に拠点を置くカネマサ莫大小株式会社。1964年の創業以来、丸編みニットの世界で独自の地位を築いてきた。
伝統と革新を両輪に、未知の領域へと挑み続ける同社。今回は、同社3代目の百間谷浩平さんを取材し、祖父から受け継がれる「ユニークなものづくり」の精神、業界の常識を覆す技術開発、そしてコロナ禍を機に誕生したファクトリーブランド「KANEMASA PHIL.」の背景にある物語を伺った。
PROFILE|プロフィール
百間谷 浩平(ひゃっけんだに こうへい)
百間谷 浩平(ひゃっけんだに こうへい)

1992年生まれ、和歌山県出身。2014年同志社大学卒業後、大手繊維商社に入社。その後、2018年より家業であるカネマサ莫大小㈱のモノづくりの精神に感銘を受け、入社。国内外ハイメゾンを中心に新規開拓を進め、自社のテキスタイルコレクションに大きな手応えを感じる。

2020年クラウドファンディングにて初のDtoCを試み、900万円以上の応援金額を達成し、翌年ファクトリーブランドKANEMASA PHIL.をローンチ。

2025年 TOKYO FASHION AWARD 2025 受賞。

祖父が築いた「ユニークなものづくり」の原点

カネマサ莫大小の歴史は1964年、百間谷さんの祖父が編み機を導入したことから始まる。日本一の丸編み産地である和歌山において、同社の創業は後発組に属する。しかし、理系のバックグラウンドを持つ創業者は、単に生地を編むだけでなく、編み機自体に手を加え、他社には真似のできない生地を生み出すことに情熱を注いだ。この「カネマサにしかできないものを作る」という姿勢は、「ユニークなものづくり」という今なお同社の根幹を成す理念となっており、絶え間ない技術革新の出発点となった。

父が加速させた海外展開と特注機械への挑戦

創業者の精神は、現社長である父(2代目)へと受け継がれる。商社出身で機械には直接触れないものの、「ユニークなものづくり」への探求心は形を変えて加速した。この挑戦のひとつの到達点が、同社の代名詞ともいえる、たくさんの針を使って高密度に編まれる「ハイゲージ」技術である。

ニットの世界で使われるゲージとは、編み機の針の密度を示す。一般的なTシャツが18ゲージから28ゲージ程度であるのに対し、カネマサ莫大小では最大46ゲージという、世界でも類を見ない超高密度の編み機を駆使する。1インチ(約2.5cm)の間に46本もの針が並ぶこの機械は、極めて繊細な調整とメンテナンスを要するが、そこは同社の職人による高い技術力が支えている。

「編み機1周に約4,300本もの針が配置されていて、そのうちたった1本でも傷があれば生地に響き、B品となるんです。この膨大な数の針を一本一本抜いて目で見て確認し、傷を見逃さないというのも、A品を作り続けるためには必要なことなんです」

また約20年前から「プルミエール・ヴィジョン」といった国際的なテキスタイル見本市にも積極的に出展し、海外市場へもその名を広めている。これら先駆的な取り組みの積み重ねが、カネマサ莫大小を「ハイゲージニッター」としての確固たる地位へと導いたのである。