有松絞りの魅力は、手仕事で作られる“一点もの”
有松絞りの歴史は1608年頃にスタートした。農業や宿場町として発展するのが難しい有松町(現名古屋市緑区の一部)で、東海道を往来する旅人に向けて手ぬぐいの販売を始めたのがきっかけだという。やがて旅人だけでなく、諸国の大名たちにも好まれるようになり、東海道の名産品へと発展を遂げた。
また、「木綿の産地である三河が近く、生地を仕入れやすかったことも発展の背景にある」と新井さんは話す。
有松絞りの特徴は、シワやヒダといった独特な触り心地と美しい模様だ。今日までたくさんの技法が考案され、模様は多彩なバリエーションを持つ。その数なんと1,000種類を超える。
「有松絞りは時代の流れとともに技法が何度も改良、開発されてきたので、種類がとても多いのです。また、職人が一つひとつ手仕事で作り上げるので、量産したとしてもそれぞれ見え方が異なります。量産だけど一点もの、その価値があるんです」
機械で量産すれば同じものを作れるが、手仕事となるとどうしても多少の差異は生まれてしまうもの。しかし、その“アジ”が有松絞りの大きな魅力なのだ。