有松絞りを世界へ:久野染工場の職人が生み出す“一点ものの価値”
2025.06.02
有松絞りを世界へ:久野染工場の職人が生み出す“一点ものの価値”
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手仕事ならではの繊細さと美しさを兼ね備える「有松絞り」。布をくくって染める「絞り」の技法を用いて、さまざまな模様が描かれるのが特徴だ。数ある絞りの産地のなかでも、有松のものは特に模様のバリエーションが豊富だという。
そんな有松絞りの歴史を、愛知県名古屋市で長きにわたってつなぐ会社がある。「有限会社絞染色 久野染工場」だ。以前は和服に使われる綿や麻の生地の絞りを中心に手がけていた同社だが、近年はレザーやポリエステルなどの生地の絞りも行い、洋服やインテリアなどへの応用を進める。その取り組みは、国内外のファッションブランドからも注目を集めている。
有松絞りの新しい可能性を開拓し続ける同社は、どのようなあゆみをたどってきたのか。企画担当の新井さんに、有松絞りの魅力や同社の取り組み、今後の展望を伺った。
PROFILE|プロフィール
新井 達也(あらい たつや)

有限会社絞染色 久野染工場 企画

有松絞りの魅力は、手仕事で作られる“一点もの”

有松絞りの歴史は1608年頃にスタートした。農業や宿場町として発展するのが難しい有松町(現名古屋市緑区の一部)で、東海道を往来する旅人に向けて手ぬぐいの販売を始めたのがきっかけだという。やがて旅人だけでなく、諸国の大名たちにも好まれるようになり、東海道の名産品へと発展を遂げた。

また、「木綿の産地である三河が近く、生地を仕入れやすかったことも発展の背景にある」と新井さんは話す。

有松絞りの特徴は、シワやヒダといった独特な触り心地と美しい模様だ。今日までたくさんの技法が考案され、模様は多彩なバリエーションを持つ。その数なんと1,000種類を超える。

「有松絞りは時代の流れとともに技法が何度も改良、開発されてきたので、種類がとても多いのです。また、職人が一つひとつ手仕事で作り上げるので、量産したとしてもそれぞれ見え方が異なります。量産だけど一点もの、その価値があるんです」

機械で量産すれば同じものを作れるが、手仕事となるとどうしても多少の差異は生まれてしまうもの。しかし、その“アジ”が有松絞りの大きな魅力なのだ。
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