

1990年千葉県生まれ。大正14年創業の「鈴染」4代目として萬祝染を継承。大学時代の海外での経験を機に、家業を継ぐ決意を固める。房総の漁師文化に根ざした萬祝の魅力を、現代的なプロダクトや体験を通じて次世代へと伝えている。

千葉県の外房、港町として栄えてきた鴨川。古くからの商店も残るマリンロードを歩くと、創業1925年の工房、鴨川萬祝染 鈴染がある。
萬祝は鶴亀、松竹梅、宝船など、縁起のよい図柄が色鮮やかに描かれる。始まりは江戸時代、千葉九十九里で大漁を祝う晴れ着として生まれた。漁師たちは、海に感謝し、萬祝を配るようになったのだ。
「萬祝は全国の港町に広がり、その土地で獲れる魚などが図柄に染められるようになりました。漁師さんは当時あまり位が高くなかったようで、そういったところから生まれた染物は珍しいと思います」
「なぜ千葉の外房で漁師の染物が生まれたのでしょう?」と問うと、「これが面白いんですよ」と鈴木さん。
「江戸の贅沢禁止令を受けて、職を失った狩野派の絵師たちが房総に渡り鮮やかな絵を描いたと言われているんです」
さらに鰯を干した肥料である干鰯の需要が江戸で高まったことが、それを後押しした。干鰯で栽培した木綿と藍から、萬祝が染められるようになったという。
「どれか一つでもタイミングがずれていたとしたら、萬祝は生まれなかった。そう考えると、すごいことだと思うんですよね」