300年続く名尾手すき和紙:梶の木が支える和紙文化
2026.02.12
300年続く名尾手すき和紙:梶の木が支える和紙文化
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佐賀県の山あいにある名尾地区で、約330年にわたり受け継がれてきた名尾手すき和紙。和紙の原料となる梶を自ら栽培し、紙を漉き、プロダクトまで手がける希少な存在だ。伝統工芸の枠に収まらない自由な発想と、土地の素材を使いこなす姿勢は、和紙の未来に新たな光を投げかけている。和紙を「楽しむもの」と語る谷口弦さんに、その思想と実践、そして名尾手すき和紙がつくる“これから”を聞いた。
PROFILE|プロフィール
谷口 弦(たにぐち げん)

1990年佐賀県生まれ、関西大学社会学部心理学科卒業。

服飾業界での勤務を経て、江戸時代より300年以上続く和紙工房、名尾手すき和紙の七代目として家業を継ぎ伝統を守る傍ら、作家として作品の制作を行う。

佐賀を拠点に活動し、KMNR™としての活動を経て、国内外各地で個展を開催し、グループ展にも参加している。

名尾手すき和紙の原点は“農民の知恵”から始まった

名尾手すき和紙の歴史は、約330年前にこの土地の農民が、福岡・筑後で学んだ和紙技術を持ち帰ったことから始まる。名尾は平地が少なく、農業だけでは生計を立てにくい地域だった。農耕地不足を補うために身につけたのが、紙づくりという新たな技術だった。

その際、名尾に自生していた梶が原料として適していたことが、名尾ならではの和紙文化を育んだ。

紙を漉き、売り先を探し、仕事をつくる——すべてを自ら行う必要があったため、名尾では早い時期から“開かれた工房文化”が育った。提灯職人といった職人とともに、その用途に応じて紙の厚みや表情を調整してきた歴史は、現在の共創的な姿勢にもつながっている。

伝統を守ろうと肩肘を張るのではなく、「生活の延長として紙をつくり続けてきただけ」という自然体の姿勢こそ、名尾手すき和紙の原点だ。

店舗や工房には当時の写真がいくつも飾られている
店舗や工房には当時の写真がいくつも飾られている