創業140年、埼玉・春日部の老舗「田中帽子店」:麦わら帽子が愛され続ける理由
2025.07.16
創業140年、埼玉・春日部の老舗「田中帽子店」:麦わら帽子が愛され続ける理由
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江戸へと向かう日光街道沿いにある埼玉・春日部は、明治時代からの麦わら帽子の産地。1880年創業の田中帽子店は、職人の手仕事で麦わら帽子を作り続けてきた老舗の帽子店である。
25歳の若さで6代目に就任した田中 優さんは、卓越したブランディング戦略で田中帽子店の名を世に広め、業績を伸ばした立役者。現在では稀少になってしまった、伝統ある麦わら帽子が現代の人々に愛される理由を探る。
PROFILE|プロフィール
田中 優(たなか ゆう)
田中 優(たなか ゆう)

株式会社田中帽子店 代表取締役。大学卒業後、数年間フリーターとして将来を模索。東京の帽子問屋で3年間修業後、2016年に田中帽子店に入社し、6代目に就任。オンライン販売やオリジナルブランドの展開、直営店の立ち上げ、ポップアップストア出店など、精力的に活動し続けている。

紫外線を防いで、涼しい。夏を彩る麦わら帽子を100年以上作り続けてきた

夏の定番の麦わら帽子。田中帽子店の麦わら帽子は「UVカット99%」と書かれていてとても驚きました。

麦わら帽子は、昔から農家さんが夏の農作業時にかぶっていた帽子で、紫外線をカットすると言われてきました。これまでは科学的証拠がなかったのですが、あるメディアの取材で紫外線の遮蔽率を検査してみたら、なんと100%。「UVカット99%」と謳っているのは、人の動きで多少は紫外線を浴びるから。でも、実際の遮蔽率は100%です。

麦わら帽子は、紫外線を通さないのに通気性がある。その秘密は麦わらにあり、中のストロー状の空洞が、蒸れや湿った風を逃がしてくれます。ふんわりと柔らかく頭を包み込んで、暑い日でも涼しい。素材を生かし、理にかなった素晴らしい帽子なんです。

春日部では、職人の手で麦わら帽子が作られ続けてきたんですね。

当社の創業は1880年、最初は麦農家でした。この辺り一帯は麦畑だったんです。川の下流で、土が栄養を豊富に含んでいて、麦がよく育つ土地でした。

麦の穂はビールになり麦わらは捨てていたんですが、それではもったいないと、明治時代に真田紐(さなだひも)という麦わら帽子の原料に加工して、ヨーロッパへ輸出するようになりました。大正ロマンで帽子文化が広まり、人々がカンカン帽をかぶって外出する頃、ドイツからミシンを輸入して、帽子づくりが始まりました。

帽子ブームの後押しもあり、手がける会社が10軒ほどに増え、春日部は麦わら帽子の一大産地になりました。しかし、後継者問題や帽子の需要低下とともに減っていき、現在は当社のみになってしまいました。

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