400年続く技法を親子で守る岩手の伝統:南部古代型染
2025.08.04
400年続く技法を親子で守る岩手の伝統:南部古代型染
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400年の時を超えて受け継がれる、岩手県盛岡市の伝統工芸「南部古代型染」。武士の装束を彩った繊細な文様と、その技法を今に伝えるのが「蛭子屋小野染彩所」だ。
分業が主流の現代において、型彫りから染めまで一貫して手仕事で行う。18代目・小野信明さんと、19代目として家業に加わった晶央さんは、時代の変化に向き合いながらも、南部古代型染の技法と精神を忠実に守り続けている。伝統を継承しながら、次代へとつなぐその親子の覚悟をうかがった。
PROFILE|プロフィール
左・小野 信明(おの のぶあき)右・小野 晶央(おの あきひろ)
左・小野 信明(おの のぶあき)右・小野 晶央(おの あきひろ)

小野 信明

南部古代型染「小野染彩所」18代目当主

盛岡市生まれ。大学で染色デザインを学び、デザイン会社へ。27歳で家業に入り、型彫り・糊置・染色までを一貫して手がける。

小野 晶央

型染職人及び 社業全般/南部古代型染「小野染彩所」19代目

盛岡市生まれ。大学卒業後に一般企業へ就職。その後、専門学校に通い染色を学ぶ。30歳で家業に入り、現在は糊置きや社業全般を担当。伝統を受け継ぎながら、若い世代にも届くデザインを提案していくことを目指している。

400年の伝統が宿る、南部古代型染

南部古代型染と特徴について教えてください。


信明さん 南部古代型染のルーツは、室町時代にまでさかのぼります。もともとは武将の旗指物や馬印、陣幕などに家紋や紋章を染めるための技法で、やがて藩ごとに独自の型染が生まれ、裃や袴、小袖といった武士の装束にも繊細な模様が施されるようになりました。

現在の「南部古代型染」は、寛永5年(1628年)、南部家の南部義光公が山梨県・南部郷から盛岡へ移った際、御用染師として従っていた蛭子屋三右衛門が盛岡で「蛭子屋」を創業したことに始まります。

小野染彩所に受け継がれてきた南部古代型染の文様の中には、400年以上前に生まれたものも残っています。南部古代型染の魅力は、なんといってもその文様の美しさです。

代表的な柄には、南部家の紋章「向鶴」、海辺に群れ飛ぶ千鳥を表現した「千羽千鳥」、そして最古の文様とされる「荻」などがあり、いずれも繊細さと力強さを兼ね備えています。分業制が一般的な型染の世界において、小野染彩所では型彫りから染めまでのすべての工程を一貫して手がけています。

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