南部鉄器とは、岩手県の盛岡市と奥州市水沢という2つの地域で生産される鉄鋳物の総称です。その歴史は約400年前に遡ります。
この一つの名称の下には、起源の異なる2つの流れが存在します。
一つは江戸時代初期、盛岡を治めた南部藩の藩主が京都から釜師を召し抱え、茶の湯釜を作らせたことから始まる美術工芸品としての流れです。
もう一つはそれよりさらに古く、平安時代後期にまで遡る奥州市水沢を起源とする、鍋や釜といった民衆の生活に寄り添う日用品としての流れです。
芸術性の高い茶道具を源流とする盛岡の鉄器と、実用性を追求した水沢の鉄器は、それぞれ独自の発展を遂げました。この2つの産地の鋳物組合が、1959年に共同で「岩手県南部鉄器協同組合連合会」を設立し、両産地で作られる製品を「南部鉄器」という統一ブランドで展開することを決定したのです。
この統合により、南部鉄器は美術工芸品としての格式と、日用品としての親しみやすさという2つの側面を併せ持つことになりました。