【土佐打刃物の基本を知る】400年の歴史を宿す、高知の風土が生んだ用の美に迫る
2025.08.06
【土佐打刃物の基本を知る】400年の歴史を宿す、高知の風土が生んだ用の美に迫る
リンクをコピーしました
※音声読み上げ機能はAI生成のため、
読み間違いが発生する場合があります。
先日、高知県の工房を訪れる機会を得て、私は1本の刃物が生まれる現場に立ち会いました。
炎の色、鎚(つち)の響き、そして職人の真摯な眼差し。そこで感じたのは、道具が単なるモノではなく、土地の歴史や人々の営みそのものを映し出す鏡であるという事実です。
この記事を読まれる方の中にも、日々の暮らしで使う道具に、ふと愛着を感じる瞬間があるかもしれません。ここでは、土佐打刃物が持つ奥深い世界の入り口へご案内します。

刀鍛冶から暮らしの道具へ。400年の歩み

土佐打刃物の起源は、400年以上前の戦国時代にまで遡ります。その技術的な源流は、さらに古い鎌倉時代に大和国から移住してきた刀鍛冶の一派にあるとされています。

戦乱の世が終わり、江戸時代に入ると、土佐藩の産業振興策によって新田開発や林業が活発化しました。この政策が農具や林業用刃物の需要を爆発的に増大させ、土佐の鍛冶技術は飛躍的な発展を遂げることになります。

この過程で、切れ味の鋭さを追求する「刀鍛冶(かたなかじ)」の高度な技術と、庶民の暮らしに寄り添い、道具としての頑丈さや使いやすさを重視する「野鍛冶(のかじ)」の実用的な文化が融合しました。

この2つの伝統の融合こそが、鋭い切れ味と、日常使いに耐える粘り強さという、相反する要素を高い次元で両立させる土佐打刃物の特性を育んだのです。

その長い歴史と卓越した技術が認められ、1998年5月6日には国の伝統的工芸品に指定されました。

画像提供:高知県土佐刃物連合協同組合 鍛冶屋・創生塾
画像提供:高知県土佐刃物連合協同組合 鍛冶屋・創生塾
この記事をシェアする
リンクをコピーしました