土佐打刃物の起源は、400年以上前の戦 国時代にまで遡ります。その技術的な源流は、さらに古い鎌倉時代に大和国から移住してきた刀鍛冶の一派にあるとされています。
戦乱の世が終わり、江戸時代に入ると、土佐藩の産業振興策によって新田開発や林業が活発化しました。この政策が農具や林業用刃物の需要を爆発的に増大させ、土佐の鍛冶技術は飛躍的な発展を遂げることになります。
この過程で、切れ味の鋭さを追求する「刀鍛冶(かたなかじ)」の高度な技術と、庶民の暮らしに寄り添い、道具としての頑丈さや使いやすさを重視する「野鍛冶(のかじ)」の実用的な文化が融合しました。
この2つの伝統の融合こそが、鋭い切れ味と、日常使いに耐える粘り強さという、相反する要素を高い次元で両立させる土佐打刃物の特性を育んだのです。
その長い歴史と卓越した技術が認められ、1998年5月6日には国の伝統的工芸品に指定されました。