【伊予水引の基本を知る】 贈り物に宿る日本の心、その歴史と進化を紐解く
2025.08.05
【伊予水引の基本を知る】 贈り物に宿る日本の心、その歴史と進化を紐解く
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私は先日、親しい友人の結婚式に参列する機会がありました。そのとき手にした祝儀袋には、紅白の美しい紐でかたどられた鶴が添えられていたのです。ただの飾りではない、凛とした存在感。その繊細な造形に、贈る側の丁寧な気持ちが込められているように感じ、心を動かされました。
この美しい紐には一体どういった意味があり、どのような背景を持っているのでしょうか。暮らしの節目で何気なく目にしている「水引」の、知っているようで知らない世界への扉を少し開いてみたいと思います。

水引とは? 色と結びが伝える「心」

水引とは、和紙を細く裁断し、強く縒り(より)をかけて作った紙紐「こより」を原形とする日本の伝統的な飾り紐です。そのなかでも、国内生産量の多くを占めるのが、今回ご紹介する伊予水引です。

その最大の特徴は、素材である和紙がもたらす独特の張りと、しなやかな柔軟性にあります。水引の芯は和紙でできており、その周りに染めたフィルムや色糸を巻きつけているため、紙でありながら針金のような強度を持ち、自立することさえ可能です。

この素材特性があるからこそ、直線的で端正な造形から、優美で流れるような曲線まで、多彩な表現が実現します。

また、水引は色と結びの形に象徴的な意味が込められた、一種のコミュニケーションツールでもあります。

色彩においては、祝い事である慶事には紅白や金銀が用いられ、赤は魔除けや慶びを、白は神聖さや清浄を象徴します。一方で、葬儀などの弔事には黒白や双銀が使われます。

結びの形も重要な役割を担います。「蝶結び」は、簡単に解いて何度も結び直せることから、出産や入学など、何度繰り返しても良いお祝い事に用いられます。対照的に、「結び切り」や「あわじ結び」は一度結ぶと解くのが難しい構造のため、婚礼や快気祝い、弔事といった、二度と繰り返してほしくはない一度きりの出来事に使われるのが決まりです。

このように、水引は単なる装飾ではなく、贈り手の気持ちや状況を言葉以上に伝える文化的な記号なのです。

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