陶器と磁器を分けるもっとも核心的な違いは、その原料にある。簡潔に言うならば、陶器は「土」から、磁器は「石」から作られる。この出発点の違いが、両者の性質を決定づけているのだ。
陶器の主原料は、「陶土(とうど)」と呼ばれる粘土である。山や丘から採れるこの土は、鉄分などさまざまな成分を含んでおり、それ自体が独特の温かみや表情を持つ。職人はその土地の土の性質を読み解き、素材の良さを最大限に引き出す知恵を凝らす。焼き上げると、土の粒子間に細かな隙間が残るため、多孔質で吸水性があるという特徴が生まれる。この性質が、後述する陶器ならではの「育てる」楽しみにつながっていく。素朴で、どこか懐かしい安心感 を抱かせるのは、母なる大地の一部である、土から生まれるからに他ならない。
一方、磁器の主原料は、「陶石(とうせき)」という岩石を細かく砕いた粉末である。この陶石に、長石や珪石(けいせき)などを調合して原料とする。つまり、自然の土をそのまま使う陶器とは異なり、精製された石の粉から作られるのである。これを高温で焼き締めると、ガラス質の成分が溶けて粒子間の隙間を埋め尽くす。そのため、緻密で硬く、ほとんど吸水しないという性質を持つ。その白く滑らかな肌は、まさに石由来の硬質さと気品を物語っている。
原料が土であるか、石であるか。この根源的な違いを心に留めておくと、これから解説するさまざまな特徴が、より深く理解できるだろう。