内容も同社の今を象徴するようなものだった。一般公開日前日に行われたオープニングレセプションでは、ユニクロの柳井正会長の臨席のもと、同社のグローバルブランドアンバサダーを務める元プロテニス選手のロジャー・フェデラーや、同社のクリエイティブ・ディレクターに就任したクレア・ワイト・ケラーが集結。ユニクロとのコラボレーションで話題となったルメールのクリストフ・ルメールおよびサラ・リン・トランなどが駆けつけて、カメラの前に並んだ。会場内を見渡すと、そこにはフランスの俳優 、カトリーヌ・ドヌーヴが悠然と歩いており、イベントの華やかさをより際立たせた。
一般公開後も老若男女でにぎわった。ユニクロというブランドがフランスでも認知され、幅広い世代にわたって広がっている証拠である。日によっては、入場の列が広場の奥まった場所にある会場から広場まで長く続いたこともあった。1984年に広島市に開店した1号店(当時の店名はユニーク・クロージング・ウエアハウス)から現在に至る、同社の成長を象徴するような光景だった。
あらゆる人の生活をより豊かにするための服
皆さんはユニクロに対してどのようなイメージを持っているだろうか。それぞれの持つイメージは異なるだろうが、私にとってのユニクロは安心感だ。服の機能はこだわり抜かれているし、デザインについてもトレンドを押さえつつ外さない。予算を大きく超えることもなく、使い勝手も良い。今回の特別展は、そのユニクロが2013年から服作りのコンセプトとして掲げる「LifeWear」を、展示やインスタレーションを通じて体験できる仕組みだった。それを地上階と地下1階の2フロアで展開した。
補足すると、LifeWearとは「あらゆる人の生活 をより豊かにするための服」のこと。「美意識ある合理性を持ち、シンプルで上質、そして細部への工夫に満ちている。生活ニーズから考え抜かれ、進化し続ける普段着」とユニクロは位置付けている。
今回の展示において、地上階には2024年の秋冬コレクションを、「ラウンジ」「クリーン・カジュアル」「スポーツ・ユーティリティ」「キッズ」といったテーマ別に飾られたインテリアの中に配置。「すべての人が日常生活において着ることを楽しめる」ようにデザインされたLifeWearの世界観が示され、それらを囲むように、カシミアや「UT」といった同じくユニクロの定番商品が展示された。
地下1階では、ユニクロの服作りに欠かせない素材や技術に焦点を当てた。「ヒートテック」「パフテック」「ナノデザイン」など、実際の製品や素材が置かれ、それらの構造を説明する内容だ。ユニクロの服の機能性について、あらためて理解を深められ、またそれらパネル展示と共に、各素材の技術からインスパイアされたアート作品が、暗く幻想的な雰囲気のフロアを彩った。