株式会社夢おりの郷 代表取締役社長
「夢おりの郷」は創業から67年。南さんの祖父が築き、父が引き継ぎ、今は南さんが3代目として工房を率いています。
しかし、この継承の道は決して一直線ではありませんでした。南さんの父はもともと東京で工学を学び、家業を継ぐつもりはなかったといいます。けれども長男が経営に向かず、奄美へ呼び戻される形で家に入ることに。そして南さんもまた、同じ葛藤を抱えていました。
「子どもの頃から“いずれは継ぐんだろう”という空気はありました。でも両親からは強制されることもなく、自分の道を探せと言ってもらっていたんです」
全国展開の呉服会社で働き始め、当時は業界最大手の売り上げを誇っていたものの、まさかの倒産。安定を求めていた就職先が崩れたとき 、「帰るなら今だ」と26歳で故郷に戻る決断をしました。葛藤を抱えながらも奄美に戻り、家業を引き継ぐ決意を固めた南さん。そこには「伝統を絶やしてはいけない」という使命感と、「一度離れたからこそ見える価値」がありました。