一筋の紐に宿る、日本の美意識――贈り物がもっと豊かになる水引の世界
2025.09.12
一筋の紐に宿る、日本の美意識――贈り物がもっと豊かになる水引の世界
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贈り物が交わされるとき、その品物だけでなく、添えられた装飾にも贈り手の深い心が込められています。
特に、祝儀や不祝儀の際に用いられる水引は、単なる飾り紐ではありません。その一本一本の色彩、そして結びの形には、日本人が古来育んできた人間関係や自然への想い、美意識が凝縮された、言葉を超えたメッセージが宿っています。
本記事では、この繊細で豊かな水引のデザインに込められた象徴的な意味を、色彩と結びの形、そして縁起の良いモチーフという観点から紐解いていきます。

色のルール:祝いの「紅白」、悲しみの「黒白」。色に託された祈りとは?

水引のデザインを理解する上で、もっとも基本的な要素となるのが色彩の使い分けです。色は、その贈り物がどのような場面で、いかなる意図で贈られるのかを示す、最初の指標となります。

慶事(祝い事)と弔事(不祝儀)では、用いられる色が厳格に区別されており、この決まり事を守ることが、相手への敬意と配慮を示す第一歩となります。

祝いの心を映す「紅白」と「金銀」

赤は古くから魔除けや慶びを象徴し、白は神聖さや清浄さを表す色とされてきました。この紅白の組み合わせは、一般的な祝い事全般で広く用いられます。

さらに格式が高い場面、特に婚礼のような盛大で華やかな祝賀の際には、金銀の水引が選ばれます。金色と銀色の輝きは、紅白よりも一層豪華で特別な印象を与え、最上級の祝福の気持ちを表現します。

これらの華やかな色彩は、受け取る側にとっても、その祝い事が社会的に認められた喜ばしい出来事であることを視覚的に伝えます。

悲しみに寄り添う「黒白」と「双銀」

黒は深い悲しみを表し、主に仏式の葬儀や法事で使用されます。白と組み合わせることで、故人への哀悼の意と、厳粛な場の雰囲気を示します。

また双銀(銀一色)の水引も弔事に使われます(関西地方の一部では黄白が用いられるなど、地域差も見られます)。

これらの色彩は、言葉にしなくとも、静かに故人を偲び、遺族に寄り添う気持ちを伝達する役割を担っています。