津軽塗の品質を決定づけるのは、最終的には見えなくなる下地作りです。この目に見えない部分への徹底したこだわりこそが、何十年も使い続けられる堅牢性の礎となります。
・木地加工(きじかこう)
全ての始まりは、器の原型となる木地です。十分に乾燥させた青森ヒバなどの木材を、椀や盆であれば轆轤(ろくろ)で挽く「挽物(ひきもの)」、重箱などであれば板を組み合わせる「指物(さしもの)」の技術で加工します。この木地が、これから続く長い工程の土台となります。
・布着せ(ぬのきせ)
次に、木地の強度を高めるための工程です。特に縁や接合部など、構造的に弱い部分に、麻布を漆で貼り付けて補強します。米糊と漆を混ぜた接着剤で布を木地に完全に密着させることで、器物全体の耐久性を飛躍的に向上させます。
・本堅地造り(ほんかたじづくり)
津軽塗の堅牢さを決定づける、もっとも重要な工程の一つです。漆に土の粉である「地の粉(じのこ)」や砥石の粉である「砥の粉(とのこ)」を混ぜ合わせた錆漆(さびうるし)と呼ばれるペースト状の下地材を、ヘラで木地に何度も塗り重ねていきます。一度塗るごとに漆を完全に乾燥させ、それを砥石で平滑に研ぐ作業を繰り返します。この作業によって、石のように硬く、厚みのある完璧な下地層が形成され、津軽塗の頑丈な「骨格」となるのです。