「実用的であることは大前提。でも、それだけではない。“意味”のある美しさに触れたかったのです」
そう語るのは、バッグを中心としたアクセサリーブランド「
Noirgaze(ノワールゲイズ)」の設立者、Vingi(ヴィンチ)だ。香港で育ち、ヨーロッパの名門校やファッションメゾンで経験を重ねた彼女は、感性と構築性、クラフトとコンセプトが交差する地点から、“纏う彫刻”とも言うべきバッグを生み出す。
「Noirgaze」は、時代に流されず、記憶に残るものを作りたいという純粋な思いから始まった。静かにラグジュアリーの定義を問い直すそのブランド哲学について、彼女の原体験やクラフトへの情熱を紐解いていく。
“自己の美学”を形にするということ
混沌と色彩、スピードと静寂が交錯する都市、香港で育ったヴィンチ。彼女のファッションへの原体験は、80〜90年代の香港映画と、母が大切にしていたヴィンテージジュエリーにある。「真珠やバッグで遊びながら、自分だけのスタイルを探っていました」と回想するように、その出発点は極めて感覚的でパーソナルなものだった。ファッションへの情熱を胸に、イギリスの名門セントラル・セント・マーチンズへ進学。その後、ヨーロッパの一流メゾンで研鑽を積むなかで、「創造性と実用性を両立させる」という視点を養っていく。