コルカタのNIFT(国立ファッション・デザイン・スクール)でファッションデザインを学び、アハマダバードの国立デザイン研究所(NID)でテキスタイルデザインのマスター号を取得。その後、パリのENSCI–Les Ateliersで研修を修了。2017年にスタジオ・ミディアムを設立。同スタジオは2020年のラクメ・ファッション・ウィークでデビューし、以来、素材の探求とテキスタイル主導のデザインを追求する空間として成長を続けている。
国際クラフト賞、エル・デコ・インディア・デザイン賞、ザ・インディア・ストーリー・デザイン賞、サーキュラー・デザイン・チャレンジ、エル・サステナビリティ賞など、数多く受賞。
有松の駅を降りた瞬間から、それは始まります。絞り染めの模様が型押しされたガラスの手すり、絞った反物を模したコンクリート製の車止め、大きな絞り染めの魚が建物の正面を彩り、この町がまさに「絞り」とともに生きていることを実感するのです。
私はインド出身のテキスタイルデザイナーで、インドの伝統的な絞り染め技法「バンダニ」は私たちの暮らしの中に息づいています。私は第11回国際絞り会議(ISS)に参加するため、日本を訪れ、絞り染め、有松絞り、その他の 技法(レジスト・ダイイング)を学びました。
他のどの国よりも現代性と技術を取り入れた国であるこの日本で、伝統がいかに生き続けているのかを知りたかったのです。そこで見つけたのは、故郷のインドと同様に、職人技とプロセスへの深い敬意であり、私のファッションデザインブランド「STUDIO MEDIUM」のビジョンを形作る哲学となりました。それは、精密さへのこだわり、意志をもって行動すること、そして素材に対する謙虚さです。
日本における工芸のすばらしさは、単に作品そのものにとどまらず、それを生み出す過程や取り巻く全てにおいて、真摯に向き合う姿にあります。道具を大切にし、プロセスを丁寧に守り、知識は世代を超えて受け継がれていきます。その背景には、みんなで守るという意識があります。これはインドにも似たような側面がありますが、この30年で状況は大きく変化しました。
滞在中に出会った職人たちは、何十年にもわたり絞りを手がけてきた方々でした。その一針一針、一折、一折が、彼らの身体に染み込んでいます。藍染の甕(かめ)はまるで生き物のように日々見守られ、手入れされていました。仕上げることに時間と労力をかける様子からは、プロセスそのものが、出来上がった製品と同じくらい大切にされていることがよくわかりました。