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2024.10.22

ファッション界の花モチーフ:イヴ・サンローランのデザインの背後にある物語

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2024年9月20日から2025年5月4日まで、フランス・パリのイヴ・サンローラン美術館では「イヴ・サンローランの花(Les Fleurs d'Yves Saint Laurent)」が開催されている。
イヴ・サンローランにとって、花はインスピレーションの源として欠かせないものだった。パートナーのピエール・ベルジェとともに、日頃から花や庭に囲まれて過ごしていたといい、花から無限のインスピレーションを得ていたという。
この自然への憧れは、サンローランが愛読していた小説家マルセル・プルーストを含む、多くの芸術家や作家たちから影響を受けているという。
プルーストの世界観は、デザイナーたちのインテリアやランウェイショーにも影響を与えた。作家が女性を花に例えたように、サンローランは花で女性を飾ることで敬意を表現したのだ。
今回展示された30点を超える衣装とデザイン画は、自然と文学、そしてサンローランの創作物が互いに影響し合う関係性を鮮明に表現している。Fashion Tech Newsでは、開催期間中に同美術館を訪れる機会があった。どのような展示があったのか、写真を交えて一部を紹介していく。

コレクションができるまで

入り口を抜けると、開放的な空間が来訪者を迎える。最初のスペースには、各コレクションの起点となるアイテムが展示されていた。
撮影/ZOZONEXT
撮影/ZOZONEXT
これらのスケッチから、イヴ・サンローランの各コレクション制作が始まる。選ばれたデザインはアトリエ長に配布され、チームはトワル(試作品)を作成し、デザイナーが確認する。
撮影/ZOZONEXT
撮影/ZOZONEXT
「バイブルシート」として知られるアトリエの仕様書には生地、色、仕入れ先、小物などの情報を記録し、また別のシートには、生地の詳細や制作に必要な量と時間を記していく。最後に、コレクションボードでランウェイショーの構成を決めるというのが大まかな流れだ。
Croquis de femme portant une coiffe en fleurs, 1976, Crayons de couleur sur papier, chaque dessin : 30,8 × 21 cm
Croquis de femme portant une coiffe en fleurs, 1976, Crayons de couleur sur papier, chaque dessin : 30,8 × 21 cm
会場では、本を読んでいるかのように、プルーストからの引用文がイヴ・サンローランの花々で飾られたシルエットとともに展示され、アクセサリーやデザイナーのスケッチは台座に置かれていた。
THE FLOWERS OF YVES SAINT LAURENT  from September 20, 2024 to May 4, 2025 Les Fleurs d’Yves Saint Laurent Exhibition Views © Thibaut Voisin
THE FLOWERS OF YVES SAINT LAURENT from September 20, 2024 to May 4, 2025 Les Fleurs d’Yves Saint Laurent Exhibition Views © Thibaut Voisin
進路に沿っていくと、クリスチャン・ディオールの文字が現れる。ここでは、サンローランが花に魅了されるようになったのは、この若きクチュリエがクチュールを学んだディオールハウスで始まったと紹介されていた。
Chapeau du modèle « Bonne conduite », paille, satin et plastique Collection Christian Dior haute couture printemps-été 1958 par Yves Saint Laurent Photographie de Sarah Braeck  © Yves Saint Laurent © Sarah Braeck
Chapeau du modèle « Bonne conduite », paille, satin et plastique Collection Christian Dior haute couture printemps-été 1958 par Yves Saint Laurent Photographie de Sarah Braeck © Yves Saint Laurent © Sarah Braeck
クリスチャン・ディオールは、幅広の「カローラ」スカートで女性を花に変え、花は象徴的なモチーフとなった。ディオールは出身地にちなんで「グランビルのマスター」と呼ばれ、花を装飾に多用した。サンローランは生涯、その師の仕事への姿勢に敬意を表していたという。
THE FLOWERS OF YVES SAINT LAURENT  from September 20, 2024 to May 4, 2025 Les Fleurs d’Yves Saint Laurent Exhibition Views © Thibaut Voisin
THE FLOWERS OF YVES SAINT LAURENT from September 20, 2024 to May 4, 2025 Les Fleurs d’Yves Saint Laurent Exhibition Views © Thibaut Voisin
デザインに使われていたのは、クリスチャン・ディオールが愛したスズラン、イニシャルとユリの花を思わせるモノグラムの「YSL」ロゴ、愛を象徴するバラ、モロッコのブーゲンビリアなどが取り入れられていた。

花への情熱を表現し続ける、イヴ・サンローラン

オートクチュールの誕生以来、花はファッション界に欠かせないものとなった。多くの有名デザイナーが花をモチーフに使用し、なかでも著名なチャールズ・フレデリック・ワースは大きな花を好んだ。シャネルはツバキを、ディオールは花の曲線を用いて理想の女性像を表現したという。
Yves Saint Laurent dans le jardin de Dar es Saada, Marrakech, 1976  Photographie de Pierre Boulat  © Pierre Boulat
Yves Saint Laurent dans le jardin de Dar es Saada, Marrakech, 1976 Photographie de Pierre Boulat © Pierre Boulat
イヴ・サンローランもこの伝統を継承し、ショーの会場を花で飾った。各コレクションの締めくくりには花をモチーフにしたウェディングドレスを発表し、1999年のレティシア・カスタが着用したバラのドレスは彼の代表作となっている。
Robe de mariée portée par Laetitia Casta Collection haute couture printemps-été 1999 Photographie de Guy Marineau © Yves Saint Laurent © Guy Marineau
Robe de mariée portée par Laetitia Casta Collection haute couture printemps-été 1999 Photographie de Guy Marineau © Yves Saint Laurent © Guy Marineau
イヴ・サンローランは、オートクチュールとプレタポルテの両方で花への情熱を表現し続けた。そして彼の作品では、花は単なる装飾を超えて主題となっていった。
抽象的な表現から現実的な描写まで、サンローランの花によるデザインは、繊細な色使いと創造的な感性を示している。この展覧会は、そんなサンローランの初期の花のデザインから、刺繍された装飾、さらには他の芸術家へのオマージュまで、彼の花をテーマにした作品の軌跡を辿るものだ。
展覧会を訪れた日、サンローランの作品に見入る多くの観客の姿が印象的だった。周囲にはフランス語が飛び交い、来場者たちがサンローランの花の世界を堪能している様子がうかがえた。この特別な展示は来年5月まで続くので、パリへ訪れた際には、ぜひ足を運んでみることをおすすめする。

ヘッダーキャプション:
Robe du soir portée par Pattie Boyd 
Collection haute couture automne-hiver 1969  
Photographie de David Bailey, parue dans Vogue (Grande-Bretagne)  
© Yves Saint Laurent © David Bailey

協力:
LES FLEURS D’YVES SAINT LAURENT  du 20 septembre 2024 au 4 mai 2025  
Vues de l’exposition Les Fleurs d’Yves Saint Laurent © photo Thibaut Voisin

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