昭和51年東京、新宿区高田馬場に生まれ、平成17年、28歳のころに、父・小倉貞右に師事する。その後は経済産業大臣指定伝統的工芸品伝統工芸士や、新宿ものづくりマイスター「技の名匠」に認定されるなど、手腕を発揮。近年は洋服やワインラベルなどにも東京手描友禅を施し、新たな可能性を追求している。
そもそも友禅染とは京都で生まれた技法で、江戸時代の扇絵師・宮崎友禅が描く扇絵を小袖に応用したことから友禅模様が流行し、やがてその模様をあらわす染色技法を友禅染と呼ぶようになりました。
それまでは着物への装飾は絞り染めや刺繍が用いられていましたが、友禅染が開発されたことで装飾に輪郭が生まれ多くの色を使うことができるようになりました。
京都で生まれ広まった友禅染は、やがて参勤交代によって大名がお抱えの染師を江戸に連れてきたことで江戸にも浸透。1800年代にはその技術が根付いていたといいます。
また加賀友禅に関しては、宮崎友禅斎本人が金沢へ移り住んだ際、その技法を伝えたのではないかと言われています。
3つの友禅には、それぞれ特徴があります。
まず京友禅は、御所の周りで育つ季節草花を描く「御所時」という模様や松竹梅など、伝統的な絵柄が特徴的です。多くの色が使われるのも特徴のひとつですね。
加賀友禅は、植物や鳥といった、いわゆる花鳥風月を写実的に描写する特徴があります。そこにぼかしを入れ、印象的に仕上げます。
対して江戸の友禅、つまり東京手描友禅は、絵柄にこれといった特徴がなく、色に関しては、色数が少なくすっきりしたものが東京手描友禅の特徴といわれています。
これは江戸時代の後期に、幾度となく奢侈禁止令、つまり贅沢禁止令が発令されたことが理由です。それによって、着物に用いられる色数が制限され、華美なものが着られなくなりました。
そのなかで江戸の町人たちは、1色の中に柄を仕込んだり、裏地に絵柄をつけたりといった着物の楽しみ方をするようになりました。こうした楽しみ方から、洗練されておしゃれなものを「粋」と表現するようになったとされています。
とはいえ現在は京都や加賀で修行をして東京で活動している作家も多いので、一概には特徴をまとめきれません。染師の個性が出ることが、東京手描友禅のおもしろさかもしれませんね。