素朴な疑問が変えたものづくり
兵左衛門がお箸づくりに携わるようになったのは、浦谷岩蔵氏(現会長の父)が若狭塗箸の製造に従事したことがはじまりだ。その後、1960年に「浦谷兵左衛門」として製造販売業をスタートした。
同社がお箸の安全性を見直しはじめたのは、1970年頃のことだ。「子どもが箸先でお絵描きをしているけれど、塗料が落ちても大丈夫?」——そんな母親の問いが転機となった。
「世の中にある塗箸は、プラスチックの塗料を使っているものがほとんどです。当時は弊社でも何の疑いもなく合成化学塗料を使用していました。
しかし、そのお母さんの素朴な疑問から、『本当の安心とはなにか?』を考えるようになりました。それ以来、『口に入るお 箸は食べ物である』という考えのもと、“本物”にこだわったお箸づくりに取り組んでいます」
同社は、混じりけのないピュアな漆を「ヴァージン漆」と商標登録し、「製造するお箸の箸先には、ヴァージン漆しか使用しない」という高い安全基準を設けてお箸づくりを行っている。