【伊予水引ができるまで】一本の紙が「結びの芸術」に変わる旅
2025.08.08
【伊予水引ができるまで】一本の紙が「結びの芸術」に変わる旅
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建築やプロダクトデザインに携わっていると、完成された造形美の裏側にあるプロセス、つまり「いかにしてそれが作られたのか」という点に強い好奇心を抱くことがあります。
それは、設計図が3次元の形を成すまでの、素材との対話や技術の積み重ねの物語そのものです。
日本の伝統工芸である伊予水引もまた、その繊細で華やかな見た目とは裏腹に、極めて合理的で緻密な制作工程の上に成り立っています。
一本の紙が、いかにして多彩な表情を持つ芸術品へと姿を変えるのか。その軌跡を辿ることは、ものづくりの本質に触れる経験となるのではないでしょうか。

制作の礎、すべては良質な和紙の選定から

伊予水引の制作は、良質な和紙を選ぶことから始まります。

最終的な製品の強度や張り、そして美しさは、この最初の素材選定の段階でその大部分が決定づけられるため、これは極めて重要な工程です。

水引に用いられる和紙の多くは、楮(こうぞ)を原料としています。楮の繊維は他の製紙原料と比較して際立って長く、強靭で、互いに絡み合いやすいという特性を持っています。

この長く丈夫な繊維こそが、完成した水引に驚くほどの耐久性と、紙とは思えないほどの引張強度を与える源泉となります。

後の工程で強力な圧力をかけながら紙を縒り(より)合わせるため、素材自体の強度がなければ、そもそも水引の原形を作ることすらできません。

すべての創造は、この揺るぎない土台となる素材への深い理解と、厳格な選定眼から始まるのです。

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